今様の光源氏
* * * * * * * * * *
ニシノ君とのキスは、さみしかった。
今まで知ったどんなさみしい瞬間よりも。
女には一も二もなく優しい。
姿よしセックスよし。女に関して懲りることを知らない。
だけど最後には必ず去られてしまう…
とめどないこの世に、真実の愛を探してさまよった、
男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。
はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、
著者初の連作集。
* * * * * * * * * *
つい先ごろ竹野内豊さん主演で映画化作品公開。
竹野内豊さんは大好きなのですが、本作はなんだか内容がチャラそうな気がして
映画の方は全く見る気はなかったのですが、
なんと原作は川上弘美さんではありませんか!!
それで急に興味が出て、原作の方を読んでみることにしました。
ニシノさん、西野君、ユキヒコ、幸彦・・・
"ニシノユキヒコ"をいろいろな呼び方をする10人の女性が彼との交情を語ります。
なかなかの男前、
清潔、優しく礼儀正しい、
堅実な会社に勤めている。
女自身も知らない女の望みを、いつの間にか女の奥からすくい上げ、かなえてやる。
・・・とにかく理想に思えるこの男、
だから常につきあっている女は複数で、それぞれに気遣いを忘れないのだけれど・・・。
最後の最後にいつも女の方から逃げられてしまう。
それは彼が浮気だから?
いえ、答えは割とはじめの方に提示されています。
それは若くして亡くなった彼の美しい姉の存在。
つまりはシスターコンプレックスというやつで、
彼の胸の奥底には常に"姉"がいる。
その"姉"を求めても得られない空虚を埋めるために
彼は多くの女性と付き合い愛を得ようとするのですが、
それは所詮彼が真に求めているものとは別のもの。
女性の方はそういう事情を知らずとも、
彼がまっすぐに自分を見ていないことに気づいてしまうのです。
この構図は、光源氏になぞらえられるかもしれません。
こちらの場合はマザーコンプレックスですが、
今は亡き母への愛を男女の愛にすり替え、
多くの女性を口説き、また、もてはやされもするのだけれど、
決して本当に欲しいものは得られない。
ニシノユキヒコ=今様の光源氏というわけです。
「なんだかチャラそう」という当初の印象とは全く違う、
切ない物語なのでした。
しかし、彼と関わった女性たちは、一時でも彼のような男性に愛されたことで、
女としての自信を持ち、成長していくように思うのです。
女は強い。
辛い恋の思い出も自らの糧としていくわけですが、
男の孤独は何によっても埋まらない。
そういう物語でした。
ニシノユキヒコについては、初めから竹野内豊さんのイメージで読めたのが幸いでした。
ちょっと他の人物は思い浮かびません。
「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美 新潮文庫
満足度★★★★☆
ニシノユキヒコの恋と冒険(新潮文庫) | |
川上 弘美 | |
新潮社 |
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ニシノ君とのキスは、さみしかった。
今まで知ったどんなさみしい瞬間よりも。
女には一も二もなく優しい。
姿よしセックスよし。女に関して懲りることを知らない。
だけど最後には必ず去られてしまう…
とめどないこの世に、真実の愛を探してさまよった、
男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。
はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、
著者初の連作集。
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つい先ごろ竹野内豊さん主演で映画化作品公開。
竹野内豊さんは大好きなのですが、本作はなんだか内容がチャラそうな気がして
映画の方は全く見る気はなかったのですが、
なんと原作は川上弘美さんではありませんか!!
それで急に興味が出て、原作の方を読んでみることにしました。
ニシノさん、西野君、ユキヒコ、幸彦・・・
"ニシノユキヒコ"をいろいろな呼び方をする10人の女性が彼との交情を語ります。
なかなかの男前、
清潔、優しく礼儀正しい、
堅実な会社に勤めている。
女自身も知らない女の望みを、いつの間にか女の奥からすくい上げ、かなえてやる。
・・・とにかく理想に思えるこの男、
だから常につきあっている女は複数で、それぞれに気遣いを忘れないのだけれど・・・。
最後の最後にいつも女の方から逃げられてしまう。
それは彼が浮気だから?
いえ、答えは割とはじめの方に提示されています。
それは若くして亡くなった彼の美しい姉の存在。
つまりはシスターコンプレックスというやつで、
彼の胸の奥底には常に"姉"がいる。
その"姉"を求めても得られない空虚を埋めるために
彼は多くの女性と付き合い愛を得ようとするのですが、
それは所詮彼が真に求めているものとは別のもの。
女性の方はそういう事情を知らずとも、
彼がまっすぐに自分を見ていないことに気づいてしまうのです。
この構図は、光源氏になぞらえられるかもしれません。
こちらの場合はマザーコンプレックスですが、
今は亡き母への愛を男女の愛にすり替え、
多くの女性を口説き、また、もてはやされもするのだけれど、
決して本当に欲しいものは得られない。
ニシノユキヒコ=今様の光源氏というわけです。
「なんだかチャラそう」という当初の印象とは全く違う、
切ない物語なのでした。
しかし、彼と関わった女性たちは、一時でも彼のような男性に愛されたことで、
女としての自信を持ち、成長していくように思うのです。
女は強い。
辛い恋の思い出も自らの糧としていくわけですが、
男の孤独は何によっても埋まらない。
そういう物語でした。
ニシノユキヒコについては、初めから竹野内豊さんのイメージで読めたのが幸いでした。
ちょっと他の人物は思い浮かびません。
「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美 新潮文庫
満足度★★★★☆
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