映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

火口のふたり

2020年07月04日 | 映画(か行)

いろいろなうしろめたさに、なお突き動かされるふたり

* * * * * * * * * * * *


東日本大震災から7年目の夏。
離婚、退職の後、再就職するも会社が倒産、
以来、プータロー暮らしの賢治(柄本佑)。
そんな賢治が、いとこの直子(瀧内公美)の結婚式に出席するために
故郷の秋田に帰ってきます。
実は昔、愛し合いひたすら求め合った2人なのです。
久しぶりに対面した2人は、直子の求めにより一夜限りの愛を交わします。
しかし、抑えきれない衝動に突き動かされ、
出張中の直子の婚約者が戻るまでの5日間を共にすることになり、
2人は本能のまま互いをむさぼり合うのですが・・・

本作に登場するのは最初から最後までこの2人だけなのです。
外を歩いたり、祭りを見物したりするときの通りがかりの人は出てきますが。
そして2人の赤裸々な愛のシーンも多々。

2人の間には何かしらのうしろめたさがあるようです。
2人はいとこ同士ですが、直子の母が早くに亡くなって、2人は兄弟のように育った。
そんな相手と体を重ねることに、賢治は近親相姦めいた罪悪感を持っていた。
しかし血のつながりの濃さ故に惹かれるところもあるのではないか・・・とも。
けれど、そんな気持ちがあったせいか、賢治は他の女性と浮気し結婚までしてしまい、
2人は別れたのです。
それから会ってもいなかった2人ですが、
今回は直子がせめて結婚前に、あの日の愛をもう一度・・・と思ったのですね。
結婚が決まっていながらも、別の相手と愛を交わす。
ここでまた新たなうしろめたさ。
そしてさらには、例えば大きな災害があったとしても、それはどこかよその出来事で、
自分たちはここでこんなことをしている・・・といううしろめたさ。
こうしたうしろめたさが、いよいよ2人の性を燃え上がらせるのです。



2人の性=生なのだろうという気がします。
彼らの人生の節目が、互いの本能的な性と共にある。
ここまで相性が合うのは、ちょっとうらやましいかも、なんて思ったりして・・・

珍しくベッドシーンではないシーンで、
祭りの夜や、風力発電の大きな風車が立ち並ぶシーン、
こうした中にいる2人も美しく、ステキでした。

<WOWOW視聴にて>
「火口のふたり」
2019年/日本/115分
監督・脚本:荒井晴彦
原作:白石一文
出演:柄本佑、瀧内公美
ラブシーン頻度★★★★★
満足度★★★.5



最新の画像もっと見る

コメントを投稿