映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パパは奮闘中!

2019年06月17日 | 映画(は行)

まずは現実を受け入れよう

 

* * * * * * * * * *

本作の題名を見ると、コメディっぽい感じがするのですが、
作品のトーンはもう少し沈んでいます。

ネット通販サイトの倉庫でリーダーとして働くオリヴィエ(ロマン・デュリス)。
ある日突然妻が姿を消してしまいます。
オリヴィエは仕事をしながら二人の子どもたちの世話をしなければならず、
一杯一杯になってしまいます。
さあ、どうなる?!

オリヴィエの妻は若干心の病に陥っていたようです。
共働きの生活。
時間にもお金にもゆとりはなく、夫も仕事で早朝から夜遅くまで仕事。
そんな中で自分を見失っていくというのはわからないでもないですが、
まあ、彼女のことは本作では詳しくは描かれません。
ある日急にいなくなってそれっきり。



問題は残された夫と、小学生の息子と娘。
料理などしたこともなさそうなオリヴィエの用意する食事は
いつもシリアルに牛乳をかけるだけ・・・。
何しろ仕事があるので、子どもたちの学校の送り迎えや放課後の時間のことがまず大問題。
それで彼の母親や妹が助けに来てはくれるのですが、
彼女たちにも生活があり、いつもというわけには行きません。
しかもこれまで共働きでやっとの暮らしだったので、
妻の収入がなければこの先家賃も払えなくなるかも・・・と、
オリヴィエの悩みはつきません。



けれどオリヴィエは、あまりにも自分の大変さにとらわれているので、
子どもたちの気持ちを思いやることを忘れていた。
一番寂しいのはやはり子どもたちなんですよね。
妹の方はついに失語症に陥ったりします。
本当は、母親がいなくなってしまったというこの状況と今後のことを、
子供だからと適当にあしらうのではなくて、
しっかり向き合って話をすべきだったのかもしれません。
とはいえ実際自分自身が混乱している最中ならそれも難しいですけれど。



結局のところ本作では、子どもたちが「自分たちで母親を探しに行った」
ということが解決のきっかけだったような気がします。
それは無謀で、そしてムダで、騒ぎになっただけのことではありますが、
本当に母親はいない、帰ってこない、ということを自分で理解した。
そのことが大きいのです。
それで初めてこの家族は、新しい道へ向かうことができるのですね。


家族の問題でありながら、同時に今の社会問題をも言っているのでした。
もう少し、ゆったりと家族の時間を楽しめる生活が、誰の上にもあるといいのですが・・・。

<シアターキノにて>
「パパは奮闘中!」
2018年/ベルギー・フランス/99分
監督:ギョーム・セネズ
出演:ロマン・デュリス、ロール・カラミー、レティシア・ドッシュ、ルーシー・ドゥベイ
家族問題度★★★★☆
満足度★★★.5



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