映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「金曜日の本」吉田篤弘

2021年01月29日 | 本(エッセイ)

「おじさん」の効用

 

 

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仕事が終わった。
今日は金曜日。
明日あさっては休みで、特にこれといった用事もない。
つまり今夜から日曜の夜まで、
子どものころの「放課後」気分で心おきなく本が読める!

――小さなアパートで父と母と3人で暮らした幼少期の思い出を軸に、
いつも傍らにあった本をめぐる断章と、
読書のススメを綴った柔らかい手触りの書き下ろしエッセイ集。

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吉田篤弘さんのエッセイです。
金曜日、仕事が終われば明日あさっては休み。
子どものころの「放課後」の気分のように、心置きなく本が読める!

放課後気分で、他に心置きなくやりたいことがある方も多いでしょうけれど、
子どもの頃から運動は苦手でインドア派の私には、
とても納得のいくたとえなのです。

本巻には、著者の子どもの頃のちょっとしたエピソードがいっぱい。
特に、ご両親の兄弟、「おじさん」との思い出が楽しい。

以前から私は思っていましたが、
子どもにとっての「おじさん」という存在は、
親のように義務感も責任感もなく、
個性豊かな「おじさん」が好意を軸として子どもに向き合うので、
子どもはその言動を正面から受け入れることになるのですよね。
だから子どもの視点から描かれた「おじさん」の話って、すごく面白いものが多い。

今時の子どもにはおじさんもおばさんもそう多くはないと思うのですが、
私くらいの年代だとまだ多いのです。
それは、幸運な経験だったと思います。
親でも教師でもない大人とふれあうことは結構大事だと思うのですが・・・。

 

この本の読後、なぜか私も「おじさん」たちのことを思い出し、
すると自分の子どもの頃のことも、
次から次へと些細なつまらないことまで思い出されてしまいました・・・。
昭和の時代の、ちっぽけなおとなしい女の子のことを・・・。
変な効果のある本です。

 

「金曜日の本」吉田篤弘 中公文庫

満足度★★★★☆

 



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