映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「さよならドビュッシー」 中山七里

2012年06月22日 | 本(ミステリ)
“ピアノにかける情熱”に気を取られると・・・

                   * * * * * * * * * *

音楽ミステリーとありますが、
これは想像以上に過酷な物語でした。


ピアニストを目指す遥、16歳。
祖父と従姉妹と共に火事にあい、
1人だけ生き残ったものの、全身大火傷を負ってしまいます。
この時亡くなった祖父というのが、
先に間違って読んでしまった「さよならドビュッシー 前奏曲」の探偵役、玄太郎。
うーん、ちょっとショックですね。
今作では早々にお亡くなりになってしまいます・・・。


かろうじて生き残った遥ですが、
皮膚移植というのも、そう簡単ではないようです。
皮膚が無事に生着しても、動かないままでいると皮膚が固まって縮んでしまうため、
リハビリが必要なのですが、それが激痛を伴うという。
松葉杖をつき、顔以外全身包帯姿となりながらも
ピアニストへの道を歩もうとする遥。
しかし、追い打ちをかけるように母の死、
そして遥自身にも何者かの悪意が振りかかる。

これらの事件には関連があるのか、
彼女に危険を及ぼすのは何者なのか???


このようなミステリ的要素ももちろんあるのですが、
遥の壮絶なまでのピアノに向かう執念と、
コンクールの行方が、事件の謎以上に私達をひきつけます。
彼女をいざなうのは、天才ピアニスト岬。
そして、この物語の探偵役でもある。
カッコイイです。

さらに、コンクールシーンをクライマックスとした後、
驚愕の真実が・・・!!
通常のミステリなら想像がついたかもしれないことなのですが、
遥のピアノに掛ける情熱にすっかり心を奪われてしまっていました。
そういえばこれはミステリだった・・・と、
虚を突かれるような大仕掛。
うまくはめられてしまいました。
さすがの「このミス大賞」受賞作です。


「さよならドビュッシー」中山七里 宝島社文庫
満足度★★★★☆


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1 コメント

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Unknown (けん)
2012-06-23 02:54:25
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
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