映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

天使にショパンの歌声を

2017年02月14日 | 映画(た行)
クラシックで新しい時代に立ち向かう



* * * * * * * * * *

1960年代、カナダ、ケベック。
オーギュスティーヌは修道女ですが、カトリック系の寄宿学校の校長を務めています。
彼女はかつてピアノコンクールで優勝したことがあり、
そのため、この学校も音楽教育に力を入れており、コンクールの入賞者も出ています。
しかし、修道院により経営が見直され、
採算の合わないこの学校は閉鎖の危機に。
オーギュスティーヌは音楽の力で世論を動かそうと、
音楽イベントを開催することにしますが・・・。
ちょうどそんな頃、彼女の姪・アリスがこの学校に転校してきます。

彼女もまた素晴らしいピアノの才能を持っているのですが、
破天荒な問題児。
果たして学校は存続できるのか・・・。



何でしょう、美しいピアノやコーラスの音色に癒されはしますが、
思ったほどの大きな感動というほどではない。
けれど多分、私はこの頃の「時代」感覚をよくわかっていないからなのだろうと思った次第。
日本でもそうですが、
世の中に近代化の波が押し寄せ、どんどん変わっていく時代なんですね。
ようやく男女平等の機運が芽生えた頃で、女性の権利や自由はまだお題目程度。
ましてやシスターが表に出て社会的活動をするなどというのは
前代未聞のできごとだったのでしょう。
それがわかっていないと、本作を理解しづいらいのかも。
本作での古い考えや権力に向かう姿勢は、
今からするとちょっと地味ではあるのですが、
大変な勇気を要することなのですね。



音楽においても、若者はクラシック音楽を古臭いと感じているのが見て取れます。
アリスも、古典を勝手にジャズ風にアレンジして弾いてしまったりする。
私はそれもいいなあ・・・とは思ったのですが。
でもそんな中で、私がはっとさせられたのは、
アリスの友人・スザンヌがショパンの「別れの曲」を、
母がいつも歌っていた、と言って歌い始めるシーン。
彼女は「母はいつも酒浸り」と言って、嫌っているようだったにも関わらず、
その歌声は皆の心に優しく染み渡るのです。
思わずつられてアリスがピアノで伴奏をつける。
クラシック音楽の叙情性の真髄をアリスが気づいた瞬間です。
そしてそれは私にも十分過ぎるくらいに伝わりました・・・。



本作すべて本人がピアノを弾いたり歌ったりしていて、
差し替えはなかったそうです。
だからこそ胸に響く音楽の心。
うん、まあ、それに触れられただけでも良しとしましょう。
こんな近代化の波を経ながらも、
立派にクラシック音楽は受け継がれ愛され続けているのが幸いです。



雪と氷に覆われたカナダの冬が、
春を迎え、夏に移り変わる・・・、
そんな美しい四季の様子もステキでした。

「天使にショパンの歌声を」
2015年/カナダ/103分
監督:レア・プール
出演:セリーヌ・ボニア―、ライサンダー・メナード、ディアーヌ・ラバリー、バレリー・ブレイズ、ピエレット・ロビタイユ、エリザベス・トレンブレイ=ギャニオン
音楽性★★★★★
満足度★★★.5


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