何者にも侵されない「自分」
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2009年、ベルギーの新聞に掲載された
トランスジェンダーの少女の実話を映画化したものです。
男性の体に生まれてしまったトランスジェンダーのララ(ビクトール・ポルスター)15歳。
バレリーナになることが夢で、
難関とされるバレエ学校の入学を認められるところからストーリーは始まります。
定期的に男性としての二次性徴を抑制する投薬療法をしていますが、
更に女性化を目指してホルモン療法を始めるところです。
成長とともに変わっていく体に焦りを感じ、
そしてまた体も思うようには動きません。
足の指を血だらけにしながらも必死に練習を続けるララ。
そんなララに対して偏見なのか嫉妬なのか、嫌がらせをするクラスメイトもいて・・・。
ララ役のビクトール・ポルスターはトランスジェンダーではなくて
れっきとした男子なんですね。
女性として全く不自然ではないこの顔。
驚きです・・・。
ララがバレエダンサーを目指すのでなければ、
ここまでことは面倒でないのかもしれません。
スカートを身につければ完璧女性に見えるし、
通常の学校生活なら女子にも男子にもモテてしまいそう。
ところがです、バレエの練習衣装というのがイヤというほど体にピッタリで、
体の線がもろにわかってしまうのです。
ララは胸にパッドを入れ、股間はテーピングでびっしり押さえつけて止めてあります。
これではトイレに行くのも大変。
そのため水分を取らないようにしているようで、
練習後に洗面所で一人、水を貪るように飲む・・・。
なんとも過酷な日常。
そんなにしてまでなぜ・・・?
周りの女子たちは、ただそのままで「女」。
それをまるで誇るかのような彼女たちが、とても傲慢のように思えてしまいます。
そしてその彼女たちがララに対してみせる態度が極めて残酷。
何か異物を見るような・・・。
せめて誰か一人でも親しく話せる友人がいればよかったのですけれど。
ララの一番の理解者はララの父だと思うのです。
母親はいなくて父子家庭。
本作中ではララの体と思いのことについては父親が一番良くわかっている。
実はこの時以前には父にも相当の葛藤があったと思うのですよ。
息子のはずの子どもが、どうしても自分は女だと主張して、体も女になりたいといったときに、
それを受け入れるまでにどれだけのゴタゴタがあったことか・・・。
しかしそうしたことを乗り越えたところからこのドラマは始まっています。
だから父親は真摯に彼の体のことや学校のことなど心配し、
何でも相談するようにとララに言うのですが、
しかしただでさえ思春期のララ、そうかんたんに本音を親に話したりはできません。
ララが追い求めるのは男らしさとか女らしさというようなことではなくて、
あくまでも自分らしさなのでしょう。
美しく完璧なバレエダンサーであるために、美しい体がほしい・・・と、
そのように思いつめた結果のような気もします。
何者にも侵されない『自分』。
そういう姿こそが美しいですね。
<シアターキノにて>
「Girl ガール」
2018年/ベルギー/105分
監督:ルーカス・ドン
出演:ビクトール・ポルスター、アリエ・ワルトアリテ、オリバー・ボタル、テイヒメン・フーファールツ、ケイトリン・ダーメン
バレエの美しさ★★★★☆
トランスジェンダーを考える度★★★★★
満足度★★★★☆
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