映画と本の『たんぽぽ館』

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ランボー 最後の戦場

2020年07月13日 | 映画(ら行)

何のために闘うのか、ランボーは自身に問う

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ランボーの第4作目。
前3作は3年ずつをおいてトントンと制作されたのですが、
本作はそれから20年後、シルベスター・スタローン自身の監督作品です。

 

ランボーは第3作の時と同じく、やはりタイにいました。
ミャンマーとの国境に近い辺境のジャングル地帯で、河を行く人のためにボートを出したり、
蛇を捕まえてショーの業者に売ったり・・・しがないその日暮らし。


ちょうどその頃、ミャンマー軍事政権によるカレン族の迫害が激化しており、
米国の支援団体のサラという女性がランボーを訪ねてきます。
カレン族の村へ物資を届けに行くのでボートを出してほしいと。
今、その地へ行くのは非常に危険。
渋るランボーでしたが、サラの熱意に断り切れず、引き受けることに。

村付近の船着き場まで一行を送り、引き返したランボーですが、
その後サラたちがミャンマー軍に襲われ、拉致されたと聞きます。
その救出のため、数人の傭兵部隊が送られることになりましたが、
ランボーも同行することに・・・。

前作の時にも書いたのですが、私はこの度「ランボーが何のために闘うのか」にこだわって見ているのです。

この4作目のランボーが未だにタイにいて、
しかもどうにも今の自身自身の境遇に満足できていないというのに、
私は若干の驚きと失望を感じてしまいました。

少なくとも、第3作でタイにいたランボーはそれなりに幸せそうに見えたのですが・・・。

 

どうなんだろう、あのときトラウトマン大佐が
「ここは君のいるべき場所じゃない」と言ったのは、やはり的を得ていたのでしょうか。
それともランボーがその言葉に囚われてしまったのか。
結局生ぬるい日常で彼は「生きがい」を得られなかったようなのですね。

 

・・・というか、なんであの後トラウトマンはランボーの居場所というか働き場所を考えてくれなかったのか、
という疑問は残ります。
しかしさすがに今回トラウトマンは出てこなかった・・・。

だから今回は結局サラの救出のため危険に飛び込む事になったのだけれど、
そこには闘うことが本当に自分の「本性」なのか、
この日常で得られない満足を自分は得られるのか、
そうしたことを確かめたかったのかもしれません。

 

ああ、それにしても20年という時の流れ・・・。
あの若く張りのある美しい肉体はもう見られない・・・。
筋肉はついていますけれどね。
あの頃とはちがう。
そして今回は、本当の戦いとはどんなものなのかも知らない若造の傭兵たちを、
初めは侮られながらも結局は率いることになる。
まあ年齢的にはそうじゃなければおかしいけれど・・・、
あの飢えた狼のような孤高な青年の魂、
そうしたものはなくて、やはりオジサンなのでした・・・。

 

最後に、あきれるほどにすさまじい戦闘の後の死屍累々の場を見渡し、
冷めた目をするランボーがいます。

やるべき事はもうやり尽くしたという思いなのか、
それとも、自分の喜びがこんなことのはずがないという、ようやくの気づきなのか。

 

ラストは、故郷アメリカ、実家の牧場へと歩むランボーの姿。
作中で多分父親がまだいると彼が言っていました。
ちょっと意外だったんですよね。
20年もタイに居続けたのは、アメリカに帰る家もなかったのだろうと思っていたので・・・。
ま、20年ぶりの作品なので仕方ないか。

 

やたらと描写の残酷さが目立ちましたが、
時代がどんどん過激を求めるようになってしまったということかもしれません。

20年の時間経過を考えるには興味深い作品。

 

結局のところ私はやはり、自身のアイデンティティのために闘った、
ランボーの第一作が一番好きです。
後のはなくてもよかった・・・。

しかし、5作目までできてしまった・・・。
本作、「最後の戦場」じゃなくなってしまいましたね・・・。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「ランボー 最後の戦場」

2008年/アメリカ/90分

監督:シルベスター・スタローン

出演:シルベスター・スタローン、マシュー・マースデン、
   グレアム・マクタビッシュ、レイ・ガイエゴス、ジュリー・ベンツ

闘う意義度★★★☆☆

満足度★★★☆☆

 



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