映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

潮騒(1975)

2018年04月19日 | 映画(さ行)

この時にしてすでに稀有な純情

* * * * * * * * * *


山口百恵文芸シリーズ第二弾!
伊勢湾の歌島が舞台です。
新治(三浦友和)18歳は、漁船に乗り母と弟の生計を支えていました。
ある時、島の女にしては珍しく水汲みの下手な少女を見かけるんだね。
それが村の有力者の娘・初江(山口百恵)というわけで。
この島は水の事情が悪くて、限られた水場で水をくんで運ぶことが女たちの仕事の一つとなっているわけ。
いやあ・・・あれは大変そうだよねえ・・・。
重いし・・・。
ちょっとしたコツがあるようなんだけど、やっぱりなれないと大変だ・・・。
初江は他所に預けられていたのだけれど、この度呼び戻されて島でムコを取らせるらしいという噂・・・。
はじめて会ったときからなんとなくお互いに気になっていたんだけれど、
ある時、山の監的硝跡で出会って少し言葉をかわしてからは
気があって、時々ここでこっそり会うようになるんだね。
監的硝って何?
戦時中の見張り台・・・みたいな・・?
一応戦後の話ではあるけれど、男女が仲良くしているところを見られたりしたらあっという間に噂になってしまう
・・・ということで、こっそり会うことになったわけね。
それで、ある嵐の夜。
先についた新治は濡れた体を乾かそうと焚き火を焚いて、居眠りしてしまう。
そこへずぶ濡れになった初江がやって来て、新治が寝入っているのをいいことに、
服を脱いで乾かすんだな。
初江が素っ裸になった時に目が覚める新治。
恥ずかしいから見ないでという初江に、
お互い裸なら恥ずかしくない、と言って自分も素っ裸になる新治。
きゃー!。
三浦友和さんのふんどし姿! いい体~!
本作はこれが見られたことが最大の収穫だね。
こほん。
でね、ここで何も起こらないわけがない、と思うじゃない。
ところが、初江は言う。
「私はきっとあなたのお嫁さんになるから、結婚するまではダメ」と。
うわあ・・・。
ここまで来てなんと酷な百恵ちゃん!
絶対この時、彼はすでに反応していると思うんだけど・・・。
いやいや、それでも・・・、彼女の言葉に従う新治なのだよ。
純情だねえ・・・。
けれど、この何もなかったひとときの帰りに、
新治に気のある娘が2人が仲良く歩いているのを見てしまい、
嫉妬して、2人は出来ているという噂をばらまくのだな。
ところがこの時代、というかこの島では、かな? 
結婚前の女性が男と関係を持つということが激しいタブーなわけ。
今では考えられないかもしれないけれど・・・。
そうした男女間の恋愛とか結婚感のことが本作のテーマであるわけだ。
えーと、三島由紀夫のこの原作は1954年(昭和29年)に書かれたもの。
女性の純潔を重んじる風潮というのは都会では多分もう廃れつつあったのではないかな?
だからあえて、舞台をこんなふうに都会から遠い小さな島にしなければならなかった。
二人の恋路をじゃました娘は、東京の大学に行っていたのですが、
後に激しく後悔して
「都会で暮らして私の心は汚れてしまった。
あらぬ噂を立ててしまったことを後悔して夜も寝られない」
などと綴った手紙を親に出したりしている。
いやーここでは私は笑ってしまったけど。
こんなことで死ぬほど後悔するなんてさ。
今のなんでもありの風潮からすると冗談みたい・・・。
はい、美しく汚れない心と体を重んじる、今では忘れられた時代の物語でした・・・。

 

潮騒 [DVD]
堀威夫,笹井英男,須崎勝弥
ホリプロ



<WOWOW視聴にて>
「潮騒(1975)」
1975年/日本/93分
監督:西河克己
原作:三島由紀夫
出演:山口百恵、三浦友和、初井言栄、亀田秀紀、中村竹弥、有島一郎
純情度★★★★☆
満足度★★★☆☆



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