映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ある過去の行方

2014年05月02日 | 映画(あ行)
封印された過去が動き出す



* * * * * * * * * *

イランに住むアーマドは
妻マリーと正式に離婚の手続きをするために、パリを訪れます。
しかしかつて彼も共に住んでいた家に、
既に結婚予定のサミールとその連れ子が暮らしていた。
そんなことはアーマドには一言も告げられていなかったのですが・・・。



そんなところがちょっと不思議です。
なぜマリーはわざわざこんな気まずい状況を作るのか。
不可思議な人の愛と心理
・・・そんなことの発端が、始まってすぐにから提示されますね。



さて、この家にはマリーのアーマド以前の夫との間の女の子が二人います。
しかし長女リュシーが最近母マリーとうまくいっていない。
マリーはアーマドにリュシーと話をするよう頼むのです。
血の繋がらないアーマドとリュシーは
不思議に気持ちが通じ合う。
多情でヒステリックなマリーに悩まされる「同士」であるかのようです。
問題は自殺未遂のため現在植物状態で眠り続けるサミールの妻のことでした。
彼女はそもそもなぜ自殺をしようとしたのか。



ベールを一枚一枚剥ぐように、真相が現れていきます。
それぞれが抱え込んでいた過去の行為や本心が、少しづつ明らかにされていくのです。
サスペンスのように描かれる家族や夫婦の愛。
それは確かに、謎めいていてスリルに富んでいます。
蓋をしていた過去が、アーマドの登場によって一気に放たれる。
そんなことをも知らず、ひたすら眠り続ける女性は、
果たして懐かしい香りで眼を開くのか・・・。
いやあ、このまま眠り続けたほうが幸せのように思いますけれど・・・
こんなにも真摯なアーマドが、なぜマリーと別れなければならないような事になったのか、
そちらでももう一本映画ができそうな感じでした・・・。
2度の離婚というのは、どうもマリーに問題がありそうな気がしてしまうのですが・・・。



「ある過去の行方」
2013年/フランス・イタリア/130分
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モッサファ、ポリーヌ・ビュルレ、ジャンヌ・ジェスタン

真相の追求度★★★★☆
満足度★★★☆☆