映画と本の『たんぽぽ館』

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とらわれて夏

2014年05月16日 | 映画(た行)
みずみずしく揺れる少年の目線で



* * * * * * * * * *

アメリカ東部の小さな町。
シングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)は、
13才の息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)と暮らしています。
ある夏の日、脱獄犯のフランク(ジョシュ・ブローリン)に強要され、
彼を自宅に匿うことになってしまいます。

フランクは母子に危害を加えないと約束し、
家の掃除をし、パイを焼き、ヘンリーに野球を教えてくれたりもする。
ヘンリーは、逞しくなんでもできて、そして優しいフランクを
理想の父親のように感じていきます。
そして母は・・・。
微妙な3人の心揺れる5日間を描きます。



本作は、13才の少年の視点から捕らえられていることで、いっそう深みを増しているのです。
少年はフランクを親しく思うのと同時に、恐れをも抱いていきます。
それは、フランクの出現によって母が、母親から女へ変わっていくことのおそれ。
あの疲れた母が、次第に活き活きと美しく変貌していく様を目の当たりにして、
怖くなっていくのです。
折しも13歳、思春期の入り口に立つ彼は、
そういう母の変化の理由をわかってはいて、
母にとっては良いことと理解してはいるのですが、感情ではまだ受け入れられない。
そんな微妙なところにいるわけです。
その瑞々しい少年の心の揺れと対比して、
彼の知り合った少女のなんとさばけたこと・・・。
やはり女の子の方が大人になるのが早いようで・・・。
その鋭い洞察力。
出番は少ないのですが、ヘンリーの心境の変化をズバリ言葉にしてみせる、重要な役どころ。
私は彼女をもっと見ていたかった・・・。



アデルが夫と離婚し、落ち込んで暮らしていた理由、
そして粗暴には見えないフランクが殺人犯として投獄されていた理由、
そのことが次第に明らかにされていきます。
この5日間で、双方が心の傷を包み込み、癒やされていくようでした。



異常な状況にある男女は結ばれやすい・・・そんな鉄則があるようですが、
そうではあっても、このたった5日間がその後の互いの人生に大きな意味を満ち続けるというのは稀有なことで、
感動を覚えずにいられません。
更に、ヘンリー自身の人生にも影響していきますしね。
最後の方に登場する成人のヘンリーがトビー・マグワイアで、
始めからのナレーションを務めています。
共に過ごす時間はほんの僅かでも、
その後の人生にずっと大きな意味を投げかけていく。
そんな点で、「マディソン郡の橋」を思い出しました。
いずれも劣らぬ名作。



余談ですが、この日は「プリズナーズ」と本作2本見まして、
ある共通点を見つけました。
どちらも「囚われの人」ではありますが、
それよりも、ヒュー・ジャックマンとジョシュ・ブローリンが、
どちらも“ドロボーひげ” 。
って、私が勝手につけたひげの名前ですが、
あの鼻の下から顎までのひげで、もみあげとはつながっていない・・・。
よくコントなどでドロボーを演じるときに真っ黒く塗りつぶしたりするじゃないですか。
アレです。
「とらわれて夏」の予告編でジョシュ・ブローリンのそのひげが気になって仕方なかったのですが、
作中でひげを剃り落とすんですよね。
あれま、ひげがあったほうが良いわ・・・・。
と思った次第。


「とらわれて夏」
2013年/アメリカ/111分
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、トビー・マグワイア

ロマンス度★★★★☆
満足度★★★★★