オオスズメバチの驚くべき生態
* * * * * * * * * *
命はわずか三十日。
ここはオオスズメバチの帝国だ。
晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。
幼い妹たちと「偉大なる母」のため、
恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。
ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。
永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。
著者の新たな代表作。
* * * * * * * * * *
本作、非常に風変わりな作品です。
主人公は学名で言うヴェスパ・マンダリニア、
つまりオオスズメバチのワーカー、マリア。
蜂が主人公といえば「みなしごハッチ」を連想してしまいますが、
そんな甘ったるいものではありません。
巣の中にいる幼い妹(幼虫)たちを養うために
命がけで狩りを続ける毎日。
マリアを主人公とした物語ではありますが、
オオスズメバチの不思議な生態を、非常に科学的に解き明かしています。
オオスズメバチといえば、
遠足の列に襲いかかったりする獰猛な嫌われ者の昆虫。
巣が見つかりさえすれば即、駆除の対象となってしまいます。
でもこの本を読んだら、
「そう簡単に駆除していいのか?」
という気持ちが沸き上がってしまいますね。
でもやっぱり、見つけたら駆除するでしょうけれど・・・。
オオスズメバチのワーカーはすべてメス。
彼女らが狙うのは他の昆虫たちですが
狩りをしたらすぐに頭部や腹部、脚などは切り離し、
胸の部分を噛み砕いて肉団子を作る。
それを巣に持ち帰って幼虫たちに食べさせます。
肉食なのはその幼虫たちのみ。
成虫の彼女たちが何を食べるのかといえば、
幼虫が吐き出す密や、木の樹液。
自ら狩った獲物は自分では決して口にしない、というところでまず驚かされました。
女王蜂は外には出ず、ひたすら卵を生み続けるだけ。
しかしその女王が、この一つの巣を作るまでの物語が又壮絶なのです。
そして秋も終わりに近づいた頃、
女王蜂はワーカーに殺され、オスバチが生まれ、
そして新たな女王蜂となるべきメスバチが生まれる。
すべては、蜂個体の遺伝子のためではなく、
種族の遺伝子を守り存続させるため。
彼女たちはDNAに突き動かされて行動しているわけですが、
その過酷で合理的なことに驚かされてしまうのです。
こんなに小さな命ではあるけれど、
その仕組みの不思議さは、大きな感動を呼び起こします。
あとは、人間の出没するところに巣を作らないことを学習してくれれば・・・。
無理ですね・・・。
「風の中のマリア」百田尚樹 講談社文庫
満足度★★★☆☆
![]() | 風の中のマリア (講談社文庫) |
百田 尚樹 | |
講談社 |
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命はわずか三十日。
ここはオオスズメバチの帝国だ。
晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。
幼い妹たちと「偉大なる母」のため、
恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。
ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。
永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。
著者の新たな代表作。
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本作、非常に風変わりな作品です。
主人公は学名で言うヴェスパ・マンダリニア、
つまりオオスズメバチのワーカー、マリア。
蜂が主人公といえば「みなしごハッチ」を連想してしまいますが、
そんな甘ったるいものではありません。
巣の中にいる幼い妹(幼虫)たちを養うために
命がけで狩りを続ける毎日。
マリアを主人公とした物語ではありますが、
オオスズメバチの不思議な生態を、非常に科学的に解き明かしています。
オオスズメバチといえば、
遠足の列に襲いかかったりする獰猛な嫌われ者の昆虫。
巣が見つかりさえすれば即、駆除の対象となってしまいます。
でもこの本を読んだら、
「そう簡単に駆除していいのか?」
という気持ちが沸き上がってしまいますね。
でもやっぱり、見つけたら駆除するでしょうけれど・・・。
オオスズメバチのワーカーはすべてメス。
彼女らが狙うのは他の昆虫たちですが
狩りをしたらすぐに頭部や腹部、脚などは切り離し、
胸の部分を噛み砕いて肉団子を作る。
それを巣に持ち帰って幼虫たちに食べさせます。
肉食なのはその幼虫たちのみ。
成虫の彼女たちが何を食べるのかといえば、
幼虫が吐き出す密や、木の樹液。
自ら狩った獲物は自分では決して口にしない、というところでまず驚かされました。
女王蜂は外には出ず、ひたすら卵を生み続けるだけ。
しかしその女王が、この一つの巣を作るまでの物語が又壮絶なのです。
そして秋も終わりに近づいた頃、
女王蜂はワーカーに殺され、オスバチが生まれ、
そして新たな女王蜂となるべきメスバチが生まれる。
すべては、蜂個体の遺伝子のためではなく、
種族の遺伝子を守り存続させるため。
彼女たちはDNAに突き動かされて行動しているわけですが、
その過酷で合理的なことに驚かされてしまうのです。
こんなに小さな命ではあるけれど、
その仕組みの不思議さは、大きな感動を呼び起こします。
あとは、人間の出没するところに巣を作らないことを学習してくれれば・・・。
無理ですね・・・。
「風の中のマリア」百田尚樹 講談社文庫
満足度★★★☆☆