映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「グイン・サーガ 131」 五代ゆう 

2013年12月01日 | グイン・サーガ
グイン・サーガ再始動!!

パロの暗黒 (ハヤカワ文庫JA)
天狼プロダクション
早川書房


* * * * * * * * * *

聖女王リンダをめぐって暗躍する、殺戮王イシュトヴァーンが、
パロに恐るべき喧騒を巻き起こす。
イシュトヴァーンは、女王リンダへの求婚をいったんあきらめ、
フロリーを追ってヤガへと軍を進める。
しかしそれは見せかけで、魔道師による追跡の目をあざむいてパロへ戻り、
身分を隠してクリスタルへ侵入するのだった。
しかしヴァレリウスは対抗手段を講じていた。
世界最大最高のファンタジイ・ロマン、満を持してここに再開幕!


* * * * * * * * * *

グインの物語は、「グイン・サーガ・ワールド」で、
外伝がいろいろな人に書き継がれているのは知っていましたが、
もう読む気がしなくてそちらは読んでいませんでした。
だからグインからはしばらく遠ざかっていて何も知らなかったもので、
このたび書店の店頭でこの本を見つけてびっくり!
だって、だって、外伝ではなくて「131巻」ということで、
正編の続きなんですもんね。
本巻は、五代ゆうさんが書いていますが、
次巻は宵野ゆめさん。
天狼プロダクションが監修を行っている・・・と。


続きと聞けばうれしいのですが、
なんとも複雑な気持ちがすることも否めません。
本当に、期待通りならばいいけれど・・・。
いやいや、誰にだって栗本薫さんにはなれません。
はじめから高望みはやめようと割り切ったほうがいいのか・・・とか。
思いは千々に乱れるのですが、
これまで全巻読み通したファンとしては、やはりこれを見逃す手はありませんよね。
(実のところ、本作はすでに「グイン・サーガ・ワールド」に掲載済のものとのことです。)


今作の著者五代ゆうさんはあとがきでこのように言っています。

自分に課した「きまりごと」。
「栗本先生なら絶対にやらなかったことをあえてすること」
そして、「どうあろうと、あくまで『私の』グインを書こう」ということ。


確かに、こう思わなければとても書けないでしょうね。
どんな風に書いても、結局批判は当然あるでしょうし・・・。
だから、そういう意味ではまさしく、
栗本「グイン」ではなく、五代「グイン」として書き上がっているなあ・・・
というのが正直な感想です。


方向としては、全く私が期待したような「続き」にはなっていません。
戦乱で散々な目にあって、しかしようやく落ち着きを取り戻そうとしていたパロが、
またしてもとんでもない災厄に襲われる。
そして、なんと"あの方"が復活・・・!?
ホントに、栗本先生なら絶対にやらないことだと思います。
でもまあ、栗本薫氏自体が意外性の塊で、
そのストーリー展開に何度驚かされたか分からないくらいでもあるので、
100%ナシってわけでもないかもしれません。


ところで、
「ヤガへ旅だったはずのイシュトバーンが、リンダへの未練が捨てきれずパロに舞い戻ってくる」
という部分も、五代さんの創作かと思ったのですが、
この部分は確かに、130巻で書かれていたことでした。
そんなことも忘れているようなので、大きなことはいえない・・・。
第一考えてみたら、このブログで「グイン・サーガ」は
ぴょこぴょこコンビ でやってたはず。
それすら忘れてたくらいなので
文句をいえた義理ではありませんね・・・。


そして、まあ、面白くは読めましたよ・・・。
だけれども・・・。
ないものねだりはわかっているのですが、どうしても思わずにいられない。
ちょっと、登場人物に品格がありませぬ
ヴァレリウスはねずみ男だし、
イシュトはただのならず者。
リギアは破廉恥女で、
マリウスはまるで駄々っ子。
気持ちはわかります。
でもここまでデフォルメすると・・・、
そのわざとらしさは芸能人のものまね大会のよう・・・。
逆に、ホンモノへの思慕が積もってしまうではありませんか・・・。
しかし、これはあれですかね。
おなじみのアニメ主人公の声優が変わった時の違和感。
それが繰り返し見るうちに次第に馴染んで当たり前になっていく。
そんな感じで五代版に馴染んでいくしかないのでしょうか・・・。


ともあれ、私はここに脚を踏み込んでしまったので、
次の132巻も読んでみることにします。

「グイン・サーガ 131」五代ゆう ハヤカワ文庫
不満足度★★★★☆