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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マイ・レフトフット

2013年05月17日 | 映画(ま行)
母の愛と、生きる力

            * * * * * * * * *


アイルランドの画家であり小説家でもある
クリスティ・ブラウンの半生を描いた作品です。
彼は、ブラウン家の10番目の子どもとして誕生しましたが、
重度の脳性麻痺という障害がありました。
自分で動かせるのは左足のみ。
歩くこともできず、言葉もうまく発することができないということで、
家族たちからも、この子は知能が劣ると思われていたのです。
でも彼は並以上の知能と情熱を秘めていました。
あるとき、左足の指にチョークをはさみ、
床に“MOTHER”と書いて家族を驚かせる。
大好きなお母さんに、なんとしても彼の気持ちを伝えたかったのでしょう。
思わず涙してしまうシーンでした。
それから彼は左足で文字ばかりか絵を描くようになり、
周囲にも認められるようになっていきます。
まさに心の叫びを描くような、力強いタッチの魅力的な作品の数々。
彼は幾度か女性に恋をして、失恋するのですが、
そういった情熱が彼の絵に注ぎ込まれるからこその、
存在感のある作品と見受けられます。
愛を求めることが並以上であれば、その喪失感も並以上。
他者と相容れない自分を意識してしまい、
孤独を抱え込むことにもなります。
けれど、今作はちょっとハッピーな仕掛けがあって、
決して重苦しい作品ではないので、安心して御覧ください。


このブラウン家は貧乏人の子沢山の見本のように、
子供が大勢いるのです。
そんな中でも、お母さんは常に彼に気を配り愛情を注ぎ込みます。
また彼は兄弟や近所の子達とも一緒に遊びます。
決して家に引きこもって大事にされ続けていたわけでもない。
母親にとっては“ちょっと”手のかかる大勢の子どもたちのうちの一人。
そういうスタンスは大事なのではないかと思いました。
しかし実はその“ちょっと”が大きいのですけれど。
まさに、このお母さんあってこそのクリスティ・ブラウンなのです。


今作は、このたび見た「リンカーン」の
ダニエル・デイ=ルイスつながりで見たわけですが、
非常に見応えがありました。
作中のクリスティ・ブラウンは、
車椅子に乗り、軟派が趣味で、
アルコールのビンを携帯しストローですするというちょっぴりユーモラスなヒゲ男。
(リンカーンにも似ています!)
ステキです。
そして、ダニエル・デイ=ルイスの障害の演技は驚嘆に値します。
一度目のアカデミー主演男優賞作品というのも納得出来ます。
「ゼア・ウィル・ビ・ブラッド」も、もう一度見たくなてしまいました。

マイ・レフトフット [DVD]
ダニエル・デイ・ルイス,ブレンダ・フリッカー
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント


「マイ・レフトフット」
1989/イギリス
監督:ジム・シェリダン
原作:クリスティ・ブラウン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、レイ・マカナリー、ブレンダ・フリッカー、ルース・マッケイブ、フィオナ・ショウ

母親の愛情度★★★★★
リアルな演技度★★★★★
満足度★★★★☆