一庶民から見た明治維新
* * * * * * * *
時代物ですが、舞台は幕末です。
「福助」というおでんが評判の一膳飯屋。
女将のおあきさんと、岡っ引きのご亭主弘蔵。16になる娘のおてい。
そして家を飛び出して滅多に帰らない長男良助。
江戸末期から明治にかけて、時代に翻弄されるこの一家の出来事を描き出しています。
幕末。
数々の英雄の活躍する本やドラマは多いですが、
一介の庶民の立場からというのはそう多くはありません。
官軍が意気揚々と乗り込んでくる江戸。
将軍のお膝元の人々は、面はゆく見ているようですね。
でも、結局だれが政権を握ろうとも、
一般庶民は昨日も今日も毎日の生活に精一杯だ。
だから何も影響がないかと言えば、
若者は血気にはやって戦争に加わるなど、やはり動乱の世の影が落ちてくる。
いつの時代も人々は普通に幸せを求めて過ごしていたんだなあ・・・と、
当たり前のことなんですが今さらながらしみじみと思ってしまいます。
親しい人を亡くす張り裂けそうな悲しい思いや、
新しい命の誕生の喜ばしさや・・・。
どんなに文化が進歩しても、基本的に人の心の有り様は同じなんですよね。
さて、ここのご亭主、弘蔵さんは実は元松前藩の武士。
松前藩、というのがやはり宇江佐さんなんですが、
考えてみると道南は官軍と反乱軍の最後の決戦の地、
明治維新を語るには避けられない場所でもあります。
彼は松前藩のお家騒動に巻き込まれ脱藩せざるを得なくなってしまい、
武士を捨てて町人になったのです。
そんな彼だから、この幕末を一歩引いて客観的に見ている。
ちょっといなせでいい男っぽいですー。
ストーリーの合間に当時の世情が結構詳しく書いてありますので、
このあたりの歴史好きの方にはおすすめです。
坂本龍馬は出てこないですが・・・。
2人はたった一度、そろって弘蔵の故郷松前を訪れます。
当時の江戸~松前はとてつもなく遠かったでしょうね。
日は西に傾き、空は鮮やかなあかね色に染まっていた。
紺碧の海は所々、金色に光っている。
「見事な夕映えだな」
「本当に」
「何だかよ、この夕映えが江戸時代は終いになりやしたと言っているような気がすらァ」
美しい夕映えは、江戸時代の終末をたとえているのでした・・・・
満足度★★★★☆
![]() | 夕映え〈上〉 (時代小説文庫) |
宇江佐 真理 | |
角川春樹事務所 |
![]() | 夕映え〈下〉 (時代小説文庫) |
宇江佐 真理 | |
角川春樹事務所 |
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時代物ですが、舞台は幕末です。
「福助」というおでんが評判の一膳飯屋。
女将のおあきさんと、岡っ引きのご亭主弘蔵。16になる娘のおてい。
そして家を飛び出して滅多に帰らない長男良助。
江戸末期から明治にかけて、時代に翻弄されるこの一家の出来事を描き出しています。
幕末。
数々の英雄の活躍する本やドラマは多いですが、
一介の庶民の立場からというのはそう多くはありません。
官軍が意気揚々と乗り込んでくる江戸。
将軍のお膝元の人々は、面はゆく見ているようですね。
でも、結局だれが政権を握ろうとも、
一般庶民は昨日も今日も毎日の生活に精一杯だ。
だから何も影響がないかと言えば、
若者は血気にはやって戦争に加わるなど、やはり動乱の世の影が落ちてくる。
いつの時代も人々は普通に幸せを求めて過ごしていたんだなあ・・・と、
当たり前のことなんですが今さらながらしみじみと思ってしまいます。
親しい人を亡くす張り裂けそうな悲しい思いや、
新しい命の誕生の喜ばしさや・・・。
どんなに文化が進歩しても、基本的に人の心の有り様は同じなんですよね。
さて、ここのご亭主、弘蔵さんは実は元松前藩の武士。
松前藩、というのがやはり宇江佐さんなんですが、
考えてみると道南は官軍と反乱軍の最後の決戦の地、
明治維新を語るには避けられない場所でもあります。
彼は松前藩のお家騒動に巻き込まれ脱藩せざるを得なくなってしまい、
武士を捨てて町人になったのです。
そんな彼だから、この幕末を一歩引いて客観的に見ている。
ちょっといなせでいい男っぽいですー。
ストーリーの合間に当時の世情が結構詳しく書いてありますので、
このあたりの歴史好きの方にはおすすめです。
坂本龍馬は出てこないですが・・・。
2人はたった一度、そろって弘蔵の故郷松前を訪れます。
当時の江戸~松前はとてつもなく遠かったでしょうね。
日は西に傾き、空は鮮やかなあかね色に染まっていた。
紺碧の海は所々、金色に光っている。
「見事な夕映えだな」
「本当に」
「何だかよ、この夕映えが江戸時代は終いになりやしたと言っているような気がすらァ」
美しい夕映えは、江戸時代の終末をたとえているのでした・・・・
満足度★★★★☆