スフィンクス (flowers comicsシリーズここではない・どこか 2)萩尾 望都小学館このアイテムの詳細を見る |
この本を見て、まずショックだったのは、
この、萩尾望都短編集シリーズが「2」だったこと。
先に「1」が出ていたのに気づいていませんでしたね。
悔しい・・・。
さて、この本ですが、どの作品もみなよいです。
でも、特に「スフィンクス」には、うなってしまいます。
「スフィンクス」は、ギリシア悲劇を題材にしています。
私はその内容はまったくわかっていないので、
どこからどこまでが著者のオリジナルと、説明はできなくて残念ですが、
おそらく、スフィンクスの「正体」のところは、
彼女自身のイマジネーションだと思います。
ここが強烈。
もともとの神話部分も、すごい話なんですよ。
ライオス王とイオカステ妃は、とても仲むつまじく、平和に国を治めていました。
そうして、ようやく待ち望んだ男児が誕生。
ところが、
"生まれた子供は父を殺し、母と結婚するだろう"
という神託が降りた。
この言葉を信じた王は、生まれたばかりの赤子を殺すように従者に命じる。
従者は赤子を殺すのに忍びなく、道端に捨てる。
ところがその子、オイディプスは拾われ、存外に幸せに成長。
しかし、成長し自らが捨て子だったことを知ると、心が乱れ家出。
その途上、行きあった老人を殺してしまうが、
なんと実はその老人こそが、実の父ライオス。
ちょうどその頃、都ではスフィンクスという怪物が赤子をさらっては殺すので困っていた。
殺した老人の素性には何も気づかないまま街へでたオイディプスは、
そのスフィンクスを打ち倒す。
英雄となった彼は、王の未亡人、つまり自分の実の母を
そうとは知らず妻としてしまう。
・・・つまり、ここで完全に神託は現実となったわけです。
でも、これって変ですよね。
そもそも、始めからこんな神託がなければ、
オイディプスは父母の元で成長し、こんなことは起こるはずもなかった。
捻じ曲がった運命。
このストーリーの中では、更にそのスフィンクスの正体が怖い。
母性。
そして、男にとっての「マザーコンプレックス」。
底のほうに、こういったものが流れているこの作品。
さすがです。
これぞ、萩尾望都の力量ですねえ・・・。
現実の中に違和感を感じ、自分は「人魚」だとつぶやく少女。
自らの「愛」を封じ込め、その情熱を芸術に注ぎ込んでいた老女。
全体を通して語られるのは女の情念でしょうか。
やはり、このシリーズ1をさっそく読まなければ・・・
満足度★★★★★