原題:『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』
監督:滝田洋二郎
脚本:林民夫
撮影:大嶋良教
出演:二宮和也/西島秀俊/綾野剛/宮﨑あおい/西畑大吾/大地康雄/竹野内豊/笈田ヨシ
2017年/日本
「厳しさ」のあり方の微妙なズレについて
2002年、「麒麟の舌」と呼ばれる絶対味覚を持つ主人公の佐々木充はその才能が却って災いして中途半端な料理を客に提供することが出来ず自分自身の店を閉店に追い込んでしまい、今では口コミで出張で客に料理を提供している。充は児童養護施設「すずらん園」で育ったのだが園長の鈴木太一に料理人になることを反対され友人の柳澤健と一緒に園を去ったために鈴木の葬儀にも顔を出さなかった。そんな充のもとに『大日本帝国食菜全席』と呼ばれるレシピ集にまつわるある依頼が来たことからストーリーが展開していく。
ネタバレになるために詳細は省くが、一緒に暮らしている園長の鈴木が幼い頃から絶対味覚を持っていたはずの充が料理人になることに強く反対する理由が弱いと思う。さらに自分の店を潰すほどに自分が提供する料理に厳しかった充が最後に店で他の料理人に優しく振る舞うようになってしまう理由が分からず、これでは実の祖父とは逆で、社会で生きていくために妥協したととられても仕方がない。あくまでもフリーの料理人として生きていくべきではなかったのか? 「良い話」にしようとする余り物語に無理があるのだ。
ところで本作の企画は秋元康なのであるが、秋元は「ラストアイドル」も手掛けており、どうも「ラスト」にこだわっているようである。各分野の「総まとめ」に意外と必死なのであるが、本作や「バンドワゴン」などの興行的な成績が必死さに見合っていないところが気の毒ではある。