原題:『先生! 、、、好きになってもいいですか?』
監督:三木孝浩
脚本:岡田麿里
撮影:山田康介
出演:広瀬すず/生田斗真/竜星涼/森川葵/健太郎/中村倫也/比嘉愛未/八木亜希子
2017年/日本
「間違い」の是非について
原作は人気コミックらしいのだが、同じコミック原作の他の作品とは一線を画す作品である。この露光過多気味で原色が飛んだ渇いた映像は今風のポップとは離れて、昔のATG作品を彷彿とさせる。
どうも主人公の島田響が通う県立南高校の世界史の教師である伊藤貢作の「手」が気になる。それは数学教師の関矢正人に言われて日が暮れても教室に残って宿題をしている響を見かけた伊藤が響に近づいてきて差し出した手が不自然だったからなのだが、思い返してみると作品冒頭で千草恵の手紙を返してもらおうと伊藤がいる職員室に行った時に伊藤が手紙を返すために響に向かって差し出す手から始まり、その後、伊藤は響に、病院でイチゴミルクの紙パックジュースや伊藤の教員住宅でお茶など出したりするたびに手を差し出すのである。だから校舎の屋上で、普段は50点台しか点数を取れていなかった世界史のテストで97点を取って伊藤に対する愛の本気度を証明した響を抱きしめてしまった伊藤の「魔が差した」という言葉はまさにそれまで規則正しかった手の動きを間違えたという意味でリアリティーを感じるのであり、ラストで卒業した響を車で迎えにきた伊藤の手がようやく響の手とつなぎ合うことで本来あるべき場所に落ち着くのである。
ところで本作には別の意味で間違いがある。第81回入学式を経て一年後の出来事が描かれているのであるが、教室の黒板に書かれている「9月27日火曜日」や「10月3日月曜日」という日付は2016年のものである。しかし響の机の上にある卓上カレンダーは2017年のもので、明らかにどちらかが間違っているのである。この間違いは本作の内容に有効に機能していないと思う。