原題:『マライの虎』
監督:古賀聖人
脚本:木村桂三
撮影:西村梧郎/西村四郎
出演:中田弘二/南部章三/上田吉二郎/村田宏寿/押本映治/小林桂樹/浦辺粂子
1943年/日本
「戦時中」が 反映されない戦闘シーンについて
本作は実在した人物である谷豊をモデルにしたもので、妹を殺された後に強盗団を組織したり、軍関係者との邂逅により日本軍に協力し、最期はマラリアに感染して病死するという大まかな経緯はなぞっている。本作の主人公である谷豊の家は理髪店を営んでおり、幼い妹のシズ子をイギリス軍の手先となっていた共産党員の陳文慶に殺され、警察署に出向いてイギリス人署長のジョンソンを殴ったことをきっかけに「マライの虎」を名乗ってイギリス人を襲って金品を奪っては貧しい者たちに配っていた。
店の常連だった安田は特務機関員で、収集したデータを記した手帳を福原少佐に渡して欲しいといって病死してしまう。福原に説得された谷は日本軍に協力することになりイギリス軍が目論んでいた貯水池の爆破を未然に防ぐ使命を帯び、クライマックスの銃撃戦と、その後の埋葬までが描かれる。
戦意高揚を目的とした作品であることは重々承知の上で言うとするならば、イギリス人が日本語で会話している時点で冷めてしまうのだが、例えば、谷が香港から戻って来た陳文慶に対して復讐を果たすシーンなどは銃弾が当たっても死なない谷の振る舞いが奇妙で、最後の銃撃戦もグダグダで、なによりラストの「終」が二度も出てくるところなど編集もめちゃくちゃで見どころはないといってもいいのだが、戦時中にこれほどのものを作ったことを評価するべきなのだろうか。