原題:『Lost in Translation』
監督:ソフィア・コッポラ
脚本:ソフィア・コッポラ
撮影:ランス・アコード
出演:ビル・マーレイ/スカーレット・ヨハンソン/ジョバンニ・リビシ/アンナ・ファリス
2003年/アメリカ
悪しき「オリエンタリズム」について
主人公はサントリーウイスキーのテレビCMの撮影のために来日しているハリウッド俳優のボブ・ハリスと、カメラマンの夫のジョンの仕事の都合で一緒に来日していた若妻のシャーロットである。2人共に日本の仕事の仕方や文化に馴染めないでいるのは、決して日本文化がアメリカの文化と比較してつまらないとか悪いという訳ではなく、ボブはアダムの育児に夢中な妻のリディアに相手にされない寂しさで、シャーロットも仕事で忙しいジョンに構ってもらえない寂しさで異文化など理解しようとする心の余裕がないために原題通りに「翻訳に失敗(Lost in Translation)」しているのである。
それにしても日本に関する描写は酷過ぎないだろうか。例えば、日本人が「L」と「R」の発音を区別して上手くできないことに2人が文句を言うことは、フランス人が「H」を発音できないように事実であることに加えて個人の感想だから肯うにしても、怪我をしたシャーロットがボブと病院に行った際に、受付の日本人の男性職員が英語を話す相手に対して最後まで日本語を使って話したり、シャーロットを診た日本人医師が怪我の程度を日本語で説明することなど映画が撮影された2003年当時でもあり得ないはずである。これがリサーチ不足なのかアメリカ人の観客のウケを狙った悪意によるものなのか微妙なところではあるが、いくら日本人が英語が喋れないことで有名であるとはいえバカにし過ぎだと思う。