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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『光』(大森立嗣監督)

2017-12-07 00:13:18 | goo映画レビュー

原題:『光』
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
撮影:槙憲治
出演:井浦新/瑛太/長谷川京子/橋本マナミ/南果歩/平田満
2017年/日本

変えたくても変えられない本性について

 東京の離島の美浜島で暮す主人公で中学生の黒川信之は同級生の中井美花と密かに付き合っているのだが、ある晩、待ち合わせ場所に行くと美花は他の男に抱かれている最中だった。信之に気が付いた美花は強姦されたと主張し、美花の言葉を信じた信之は男を撲殺するのである。しかし翌日、島は津波に襲われ、島を離れた信之と年下の幼なじみの輔(たすく)は島を去り、美花も名前を篠浦未喜と変えて女優として売れて25年後の現在に至る。
 役所に勤めている信之は妻の南海子と5歳の娘の椿と表面上は幸せに暮らしているのだが、南海子は工場で働く輔と不倫の関係にある。そんな時に、椿は見知らぬ男性に性的ないたずらをされるのだが、南海子が受けるショックとは裏腹に信之はあくまでも冷静で南海子はそんな信之に不信感を抱くのだが、自分が不倫している最中の出来事であるため何も言えない。
 実は島での事件の死体写真を撮っていた輔の目論みは既に信之には分かっており、どのようにしてネガと共に写真を取り戻そうか篠浦未喜と密会しながら綿密な計画を立てていた。輔の父親が病死した後に、写真を取り戻した信之は父親の死体を埋めるために掘った穴に輔を撲殺してそのまま埋めてしまう。
 島の閉塞感や汚さが津波で洗い流されたように、信之は自分の人生をクリーンに保ちたいように見える。自分の過去を知っている者たちを葬り去り、妻の不倫や娘の暴行はなかったことにし、美花の浮気さえ強姦と「読み替える」のであるが、だからと言って篠浦未喜となった美花の本性が変わることはなく、無論信之や南海子の本性も変わることはない。
 実際に、ラストにおいて「パパ、パパ」と連呼する椿が見ているものが、もはや信之や南海子ではなく、信之が嫌っていた島に覆い茂っていた巨木となり都会の住宅の床を突き破って生えているというアイロニーが効いているのである。


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