MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『30年後の同窓会』

2018-09-13 20:50:38 | goo映画レビュー

原題:『Last Flag Flying』
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター/ダリル・ポニクサン
撮影:シェーン・F・ケリー
出演:スティーヴ・カレル/ブライアン・クランストン/ローレンス・フィッシュバーン
2017年/アメリカ

戦争時における「殺人」について

 主人公のラリー・シェパード、通称「ドク」がベトナム戦争時の戦友だったサル・ネルソンが営む居酒屋を訪れたのは2003年12月だった。ドクは1月に妻を乳がんで亡くし、今度はイラク戦争で亡くなった19歳の息子のラリー・ジュニアの遺体を引き取りに一緒についてきてもらうために訪ねてきたのである。
 2人は教会で牧師を務めている戦友のリチャード・ミューラーも伴って車でドーバー空軍基地に向かったのだが、そこでラリー・ジュニアと同じ部隊に所属していたチャーリー・ワシントンの話は父親にとっては過酷なものだった。息子は戦闘時ではなく、地元の子供たちのための用具を配っている際に、友人たちのためにコーラを買いに行っていたところをテロに襲われて背後から頭部を撃たれたというのである。
 つまりこれは戦場であったとしても名誉ある戦死ではなく、ただの殺人なのである。しかしこれは息子たち世代だけの問題ではなく、ラリーたちもベトナム戦争時に直面した問題だったのである。サルとリチャードは戦争時にモルヒネをドラッグ代わりに使用しており、そのために本当に重傷を負った海兵隊員のジミー・ハイタワーが苦しみながら亡くなり、薬を管理していたドクが責任を取るかたちで除隊させられていたのである。
 3人は帰路にジミーの家に寄って事実を彼の母親に伝えようとしたのだが、本当のことは言えないまま3人はジミーに救われたと感謝の意を伝え、ジミーは「名誉の死」を遂げたとする。ドクは身につまされたのである。
 ドクは息子を戦死者ではなく一般市民として埋葬するつもりだったのだが、結局、サルとリチャードに葬儀を取り仕切ってもらった。ラストでチャーリーから息子の遺書を渡されたドクは息子の遺志が色々と葛藤しながら自分たちが行った通りだったことに涙するのである。
 ドクの息子の葬儀の際に流れたリヴォン・ヘルム(Levon Helm)の「ワイド・リバ―・トゥ・クロス」を和訳しておきたい。

「Wide River To Cross」 Levon Helm 日本語訳

悲しみが風に吹かれて
僕がいる道まで吹き付けてくる
影が太陽を盗んでいる間に
僕には悲しみが泣く声が聞こえる

でも僕には振り返ることはできない
振り返るにはあまりにも遠くに来てしまったんだ
それに僕の目の前には
まだ走らなければならないレースが続いているんだ

僕は帰宅するまでまだほんの道半ばで
自分が失ったものを見つけ出すための旅をしなければならない
それはとても長い道で僕にはまだ多くの旅路が残されている
僕が渡らなければならない河はとても広い

僕は躓いたり逸脱したりしている
君は僕の足跡を辿ることができる
僕の心が思い出す記憶の全てを辿れるけれど
僕はただの難民なのだから
僕のために祈ってくれないだろうか
だって最強の兵士だって負けることはあるのだから

Diana Krall - Wide River To Cross (Lyric Video)


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ラッキー』 | トップ | 「Give Me Up」 Michael Fort... »
最新の画像もっと見る

goo映画レビュー」カテゴリの最新記事