MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ベイビー・ブローカー』

2022-07-01 00:55:27 | goo映画レビュー

原題:『ベイビー・ブローカー』 英題:『Broker』
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
撮影:ホン・ギョンピョ
出演:ソン・ガンホ/カン・ドンウォン/ペ・ドゥナ/イ・ジウン/イ・ジュヨン
2022年/韓国

「仲介役」としての赤ん坊について

 是枝裕和監督の『万引き家族』(2018年)の流れを汲む作品のように思う。つまり困難な状況にたまたま一緒に置かれた人々が助け合うことであたかも本物の家族のように振る舞えるというアイロニーが本作においても引き継がれているように思うのである。
 しかしこれはネタバレではないと思うから書くのだが、作品の冒頭で母親のソヨンが赤ん坊のウソンを教会の「ベイビーボックス」の中に入れるのではなく、外に置いたまま立ち去ってしまい、ウソンを「ベイビーボックス」に入れたのはたまたまその教会に併設されている児童養護施設で児童売買が行なわれているという情報を得て見張っていた刑事のスジンなのである。
 赤ん坊を外に置き去りにしてしまえば誰にも気がつかれないのだから確実に赤ん坊は死んでしまうことはソヨンは理解しているはずで、ソヨンはウソンに対して愛憎相半ばする感情を持っていたのだと思う。だからソヨンはウソンに対してなかなか言葉をかけることができず、最後にようやく「ウソン、生まれてきてくれてありがとう」と言えたのだと思うのだが、それは同時に親に捨てられたソヨンがソヨン自身を愛せるようになった証拠にもなるであろう。
 しかし対照的に別れた妻に子供ができて娘にも会えなくなったサンヒョンは自暴自棄のようにウソンの父親の部下のヤクザを殺害するに至る。つまり本作は如何にして人は自分自身を愛せるようになるのかという問いかけであり、赤ん坊はその仲介役(ブローカー)を務めていると思うのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-138481


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