MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ROMA/ローマ』

2019-03-20 00:54:00 | goo映画レビュー

原題:『Roma』
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン
撮影:アルフォンソ・キュアロン
出演:ヤリッツァ・アパリシオ/マリーナ・デ・タビラ/ラテン・ラヴァー
2018年/メキシコ・アメリカ

カメラの位置を変えただけでドラマを作る映画監督について

 作品冒頭のシーンは主人公で家政婦のクレオが働いている家族の家の中庭で、敷き詰められている少々大きなタイルが映し出される。掃除をしているクレオがそこに水を撒くと、溜まった水に反射して空が映し出され、そこを右から左に飛行機が横切っていき、本作の雛形が提示されるのである。実際に、映像は部屋にしてもクルマにしても「四角さ」がやたらと目立ち、そのような四角に囲まれてストーリーが展開していき、特に前半はテレビや映画内の出来事が映し出される。
 ところがクレオがボーイフレンドのフェルミンに映画館内で映画を観ている際に、妊娠していることを告げてから様相が変わって来る。例えば、クレオが病院内で新生児室を覗いている時に大地震が起こり、家から外を見ていると火災が起こり、家具を買いに行った店から外を見ると暴動が起こって店内に逃げ込んできた男が銃殺され、家族と一緒に海岸に遊びに行って子供たちが遊んでいる様子を見ていたら、子供たちが酷い日焼けをしてしまうのである。
 ずっと傍観者だったクレオだったが、カメラの位置がクレオの背後から横に変わったとたんに行動を起こす。海岸で溺れそうになっていたペペとソフィを助けるためにクレオが大波を掻き分けて救出するまでをカメラは横からずっと追いかけるのである。カメラの位置を変えただけでこれだけのドラマを撮れる監督はそうそういないのではないだろうか。


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