原題:『きばいやんせ!私』
監督:武正晴
脚本:足立紳/山口智之
撮影:西村博光
出演:夏帆/太賀/岡山天音/坂田聡/眼鏡太郎/鶴見辰吾/徳井優/愛華みれ/榎木孝明/伊吹吾郎
2018年/日本
タイトル通りに声をかけたくなる作品について
テレビ局の花形アナウンサーだった児島貴子は上司との不倫を週刊誌にすっぱ抜かれたために情報番組のメインキャスターを降板させられ、25歳にしてディレクターとカメラマンの3人でカミツキガメやオオサンショウウオなど巷で話題になっている映像を撮ってくるという「閑職」に追いやられてしまったのであるが、浮気相手は何事もなかったかのようにキャリアを積み上げている。
そんな時に、画家だった父親に連れられて幼少の頃の一時期住んでいた鹿児島県南大隅町の「佐多の御崎祭り」の取材をすることになり、最初はいやいややっていたのであるが、だんだんと地元愛がよみがえり、自分の仕事に真剣に取り組むようになるのであるが、これはいわゆる「自分探し」の物語であろう。
主人公の児島貴子のエキセントリックさに共感しにくいのではあるが、貴子が自転車の後ろに乗せられて町内を駆けまわるシーンと、貴子の幼少の頃に父親とたどったシーンがオーバーラップするシーンは魅力的だし、クライマックスで描かれる2018年2月に催された「御崎祭り」のセミドキュメンタリー的な演出は見応えがあると思う。
しかし女人禁制だった祭りに貴子が途中で参加してしまう伏線が回収されることなくスル―されてしまうし、鶴見辰吾が演じた鏑木のキャラクターが活きていないし、元気を取り戻して「閑職」に励む貴子を描くラストのオチも雑すぎるのではないだろうか。