MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『運び屋』

2019-03-28 00:58:41 | goo映画レビュー

原題:『The Mule』
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
撮影:イブ・ベランジ
出演:クリント・イーストウッド/ブラッドリー・クーパー/ローレンス・フィッシュバーン
2018年/アメリカ

泣けそうで泣けない主人公の振る舞いについて

 主人公のアール・ストーンは朝鮮戦争の退役後、園芸に打ち込み、特にデイリリー(Daylily)の品種改良で度々賞をもらっていたのだが、家族と過ごす時間を惜しんで仕事に没頭し、誕生日や結婚式などの記念行事に出席することもなかったために、特に娘のアリソンとは絶縁状態になっていた。
 1995年頃はまだ景気がよかったのだが、2017年になるとインターネットの普及で仕事が無くなってしまい、家や園芸場などの不動産を差し押さえられてしまう。金欠状態になった時に孫娘の知り合いの男から麻薬の運搬の仕事を紹介されて手を出してしまうのであるが、前妻のメアリーの死をきっかけに自ら更生を望んで服役することで家族の絆を取り戻すという話である。
 しかし本作をこのように「お涙ちょうだい物」として納得しかねる理由は、アールの立ち振る舞いが全く変わっていないからである。例えば、作品の冒頭でアールはデイリリーを女性たちに無料で配ったりしているのだが、麻薬の運び屋になった理由も最初こそ自身の不動産を取り戻すことだったが、孫娘のジニーたちへの御もてなしや退役軍人仲間の居酒屋の立て直しの費用など自分のためではなく、他人のために使うようになり、アールの運び屋としての才能は警官(や警察犬)に対する上手い交渉術によるものであり、さらにメアリーの最期を看取ることでそれまでの長い家族の不信を取っ払い、法廷で自ら罪を認めることでさらに家族の絆を深め、刑務所内では好きな園芸に打ち込めているのだから、本作は「体裁を取り繕う天才」の物語のようにしか見えないのである。
 ところで1995年頃には「このホテルはタバコ吸い放題(This Hotel 100% Smoke Free)」というプレートが存在したのだろうか? あるいはギャグなのか?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする