原題:『The Favourite』
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:デボラ・ディヴィス/トニー・マクナマラ
撮影:ロビー・ライアン
出演:オリヴィア・コールマン/エマ・ストーン/レイチェル・ワイズ/ニコラス・ホルト
2018年/アイルランド・アメリカ・イギリス
信頼で変わる関係の種類について
1708年、イングランドがフランスと戦争をしていた頃、アン女王が君主として戦争を遂行させており、側近のマールバラ公爵夫人サラは幼なじみということもあり、絶大な信頼を寄せていたためにサラは夫のジョン・チャーチルを最高司令官にさせ戦争の継続を勧める。
そこに現れたのがアビゲイル・メイシャムで、家族ぐるみの付き合いだったサラを頼りに最初はメイドとして宮廷に入ったのであるが、痛風で痛む足に塗ったアビゲイルが調合した薬草を気に入ったアン女王はアビゲイルも側室に迎える。
まるでサラとアビゲイルに奪い合われることを楽しんでいたアン女王なのだが、アビゲイルの巧妙な策略によりサラは乗馬中に気を失って行方不明になっている間にアビゲイルはサミュエル・マシャム大佐と結婚し、確実に宮廷内の地位を確立させる。
娼館に匿われていたサラは顔に傷を負いながら戻ってきたのであるが、既に宮廷はアビゲイルに支配されており、サラの反撃は却って裏目に出てしまい、最後の望みだったサラからアン女王への手紙はアビゲイルによって破り捨てられるのである。
ラストシーンはとても印象的なもので、アン女王はアビゲイルが自分の亡くなった子供たちの代わりとして飼っている17羽のウサギを足で踏んでいるところを目撃し、立ったまま自分の足をマッサージさせるとアン女王はアビゲイルの髪の毛を上から鷲づかみにして、アン女王とアビゲイルとウサギたちがオーバーラップするのである。
この意味深長なシーンは、アン女王と、サラとアビゲイルとのそれぞれの関係を暗示させるもので、最初はアン女王はサラもアビゲイルも対等な関係だと考えていたのだが、実は対等な関係だったのはサラだけで、信用できないアビゲイルとは「上下関係」だったと気がついたのである。