いつもの遅い夕飯を済ましたころ、ブーンと低い音がして未確認飛行物体が隣でドスンと堕ちた音がした。驚いて近づいてみるとなんと、「カブトムシ」のメスだったのがわかった。とりわけ障子にぶつかると意外に高い音がするのだ。兜を身につけているわりには不器用だ。仰向けになってもがいていた。
近くのキャンプ場で毎年のように花火を主催している俳優の哀川翔はカブトムシの飼育で有名だ。2015年に88mmのカブトムシを飼育してギネスに載ったことがある(2017年に91mmの記録に破られるが)。書店に行っても昆虫と言えばカブトムシとクワガタの図書が圧倒する。それほどに魅力的なアイドルでもある。とりあえず、仰向けを起こしてからまもなく外へ解放する。
いつも不思議に思うのだが、夜の訪問者はメスばかりでオスが来たためしがない。よほどオイラが気に入られているのかと陶酔しちまうが、よく考えると、わが家の隙間を考えればオスはその図体では侵入できそうもない。なあーんだ。やっぱりね。現代俳人の阿部寒林が詠んだ「兜蟲 天に投げても 堕ちて仕舞ふ」というのが哀感とユーモアを誘う。
いっぽう、夕飯の片づけもかったるいなかで、またしても空中遊泳してきたものがいた。居候の「ウマオイ」だった。突然飛んでくるからいつもハッとする。肉食性だからどうも食べ終わった箸から肉の匂いを感じているようだ。
ウマオイは、「スイッチョン」と呼ばれるほど身近なバッタだった。ウマオイには「ハタケノウマオイ」と「ハヤシノウマオイ」がいるという。体はほとんど同じだけれど鳴き方が違うという。どう違うかよくわからないが、これから注意して聴いてみることにしよう。川柳に「秋の使者 スイッチオンの スイッチョン」(英ちゃん) というのを見つけた。
雷と大雨が続く。いつもの寝室の山側はやめて今夜は居間に寝ることにする。では、スイッチオフで、無事でいられますよう。