山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

追悼

2010-01-06 00:14:20 | ポエム
 かつて一緒に子ども会活動をしていた桃ちゃんが、大晦日に突如亡くなった。
その1週間前にメールと詩を偶然いただいたが、今思うにそれがみんなとのお別れのメッセージにもなってしまった。
 その一編をぜひ紹介したい。元気印の桃ちゃんの小気味よさの一面に、もう一つのナイーブな感性がまぶしく輝いている。
 桃ちゃんがそこにいるだけで光がパッと輝いていたのが、今は見られないということなのか。とても信じられない。桃ちゃんの詩があまりに完成していたのは、結果的にはお別れの言葉になってしまった。生と死との狭間を見つめた桃ちゃんのメッセージに、我々は残されたいのちを「楡の歌」とともに全うしなければならない。
 ありがとう、桃ちゃん。  

  楡  
野にあって 夜となく昼となく 
風に陽に晒されて立つ 楡の木ひとり
「なぜ わたしは此処に?」
繰り返されるその問いかけに
こたえは、ない

遠くかすむ峰々でそよぐ仲間たちに憧れ
その枝を もっと、もっとと伸ばす日もあった
紅に染まる空を身にまとい 
痺れるように
この孤独の中 枯れてしまえと願う日もあった

けれど
降りそそぐ陽の光にこもる響き
太古より木霊する大地のおもい
 やわらかに緑ひろげよ 
 天と地をひき結べよ と
打ち寄せる波のようなその歌声が 
楡の梢を震わせ しみわたっていった

めぐりくるこの冬
びょうびょうと風は唸り
雪が 尖った我が身を叩きつけ
夢魔のように 
その目を息を 塞ごうとする 
寒さは きりきりと木を縛り上げ 
甘くまとわりつく夢の中へと誘い込む

朝、楡は静寂の中 大地と白くひと続きとなり
枝という枝は きらめく薄氷に重くたわむ
雪の きしみ崩れる声が 
ときおり 低く響きわたる
無残な棘のように立ち尽くす木を 
風はなぶり 通り過ぎていく

けれど楡は 
確かに息づいている
根は ひそかに地下水脈を探りあて 
枝は奥底に 弾丸のような新芽を忍ばせる 
幹は大地に その脈動を調和させる

楡は歌いはじめる 
来るべき 次の季節を呼ぶ歌を
微かだったその声は 風を起こし
ひるがえる冬将軍の旗を 
はるかに越えて響き渡る
大地と呼応し渦を巻きながら 
展開する星々のもとへと 立ち昇っていく

ごらん、
きょうも天空より降りしきる
夜となく昼となく 
野にまちに
子どもたち すべてのうえに
やわらかに心ひろげよ 
天と地をひき結べよ、と
打ち寄せる波のように 
絶えることなく降りしきる この――― 歌

コメント (4)
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