わが家の近くに天竜川につながっていく河川がある。今年は雨天が少なかったせいか川幅が往年の三分の一くらいしかない。むかしはその河原がキャンプ場としてにぎわったたほどの場所だった。近所の釣り名人は魚の生態や釣りの話となると止まらない。釣り大会では何回も入賞している。本業は建設業だが、釣りの為なら山奥でも突入していく。その棟梁が最近元キャンプ場の整備をひとりでやり始めた。
広かった河原は雑草と灌木が生い茂りとても川を愛でる状態ではない。せいぜい、その隙間で川施餓鬼や消防訓練が行われることもある。棟梁はまずはひとりで草刈りを始めた。そして、竹林を拓いていった。今は勝手に伸びた灌木をチェンソーで伐って、それを薪にしていた。
冬にキャンプがはやっているとのことで、川からの烈風をよけるための囲いを作りだす。華奢なベニヤづくりだがこのところの突風にも耐えている。先日にはここでキャンプや小さな宴会もなされた。焚き火用のドラム缶も常備してある。薪には事欠かない。広い河原でこれだけ整備していくにはかなりの日数がかかっているが本人は故郷と川への恩返しだという。
地元の人の多くは働き者で高齢者になっても労働現場から離れない。高齢者ばかりが多くなってしまった現在、「人生の楽しみ方」をそろそろ考え直す時ではないかという。言い換えれば、コロナ禍が世界を席巻したことにより、棟梁は「今までの生き方を見直す時代」ではないかと語るのだ。それを言葉ではなく実践で証明したいという。それは自分のための修業の場だとも思っている。それも無理なく力を抜きながらやっているのが持続の秘訣のようだ。それに触発されてオイラも近くの現場でひとりボランティアを少しづつやっていく勇気も湧いてきたのだった。