エコール・ド・パリを代表する画家の一人、パスキン(Pascin:1885-1930)の展覧会(Pascin Le magicien du reel:パスキン~現実の魔術師)が6月4日までマイヨール美術館(Musee Maillol)で行われています。
ユダヤ系スペイン人を父に、イタリア人を母にブルガリアで生まれたパスキンは、早くからその類稀なデッサン力を発揮。ウィーンで美術を学んだ後、10代ですでにミュンヘンの風刺雑誌と専属契約を結んでいました。そして、1905年、20歳でパリへ。第一次大戦中にアメリカなどへ避難したのを除いて、パリに暮らし続けました。
挿絵画家として早くから有名だったので、生活には困らなかったようです。とくに20年代の「狂乱の時代」にあっては、夜毎モンパルナス界隈に出没しては、酒と女の日々。ハンカチ王子ならぬ「モンパルナス王子」というニックネームまで頂戴していたとか。しかし、酔っていても、時に画家の鋭い視線で、狂乱に明け暮れる人々の酔態を観察。後の作品制作に生かしていたようです。飲んでも完全には酔い切れない。作家精神が目覚めてしまう・・・芸術家の苦悩かもしれないですね。
作品は実に多彩。芸術理論に依拠することを快しとせず、常に自分の「個性」の追求に努めた結果、キュビズム風あり、フォビズム風あり、表現派風あり・・・
ピカソ風あり、シャガール風あり、ロートレック風あり、エゴン・シーレ風あり、マリー・ローランサン風あり・・・いずれもが、その時々のパスキンの志向を表しているようです。しかも、いうまでもなく、どれも傑作ぞろい。
パスキン独特の技法「ナクレ」を用いて描かれた、パステル画や水彩画を髣髴とさせる透明感の中にいるモデルたちの今にも消え入りそうな儚さ、その哀愁感が、却って見るものの心にしっかりと焼き付けられるようです。
今回、油絵以上に興味を惹かれたのが、ペン、インクで描き、一部に水彩で彩色した小品の数々。
プロとしてのデビューが風刺漫画だったことも影響しているのかもしれないですが、じつに素敵な作品(イラスト的な作品)を残しています。
こうした作品に登場する両性具有の少女たち。彼女たちはパスキンの心象風景そのものだそうです。パリに暮らし、有名な画家で知人も多い。しかし、東欧系ユダヤ人、どこに行っても完全には同化できない。自己のアイデンティティはどこにあるのか。引き裂かれた心象風景が両性具有の人物になっているという説もあるようです。
子どもの心のままで大人になってしまったパスキン。社交性と冷徹な観察者の目をともに持つゆえの引き裂かれた自我。
長年の愛人だったリュシーへ、“Adieu Lucy”(さらば、リュシー)とメッセージを残して、自宅のアパルトマンで自殺。享年45歳。
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ユダヤ系スペイン人を父に、イタリア人を母にブルガリアで生まれたパスキンは、早くからその類稀なデッサン力を発揮。ウィーンで美術を学んだ後、10代ですでにミュンヘンの風刺雑誌と専属契約を結んでいました。そして、1905年、20歳でパリへ。第一次大戦中にアメリカなどへ避難したのを除いて、パリに暮らし続けました。
挿絵画家として早くから有名だったので、生活には困らなかったようです。とくに20年代の「狂乱の時代」にあっては、夜毎モンパルナス界隈に出没しては、酒と女の日々。ハンカチ王子ならぬ「モンパルナス王子」というニックネームまで頂戴していたとか。しかし、酔っていても、時に画家の鋭い視線で、狂乱に明け暮れる人々の酔態を観察。後の作品制作に生かしていたようです。飲んでも完全には酔い切れない。作家精神が目覚めてしまう・・・芸術家の苦悩かもしれないですね。
作品は実に多彩。芸術理論に依拠することを快しとせず、常に自分の「個性」の追求に努めた結果、キュビズム風あり、フォビズム風あり、表現派風あり・・・
ピカソ風あり、シャガール風あり、ロートレック風あり、エゴン・シーレ風あり、マリー・ローランサン風あり・・・いずれもが、その時々のパスキンの志向を表しているようです。しかも、いうまでもなく、どれも傑作ぞろい。
パスキン独特の技法「ナクレ」を用いて描かれた、パステル画や水彩画を髣髴とさせる透明感の中にいるモデルたちの今にも消え入りそうな儚さ、その哀愁感が、却って見るものの心にしっかりと焼き付けられるようです。
今回、油絵以上に興味を惹かれたのが、ペン、インクで描き、一部に水彩で彩色した小品の数々。
プロとしてのデビューが風刺漫画だったことも影響しているのかもしれないですが、じつに素敵な作品(イラスト的な作品)を残しています。
こうした作品に登場する両性具有の少女たち。彼女たちはパスキンの心象風景そのものだそうです。パリに暮らし、有名な画家で知人も多い。しかし、東欧系ユダヤ人、どこに行っても完全には同化できない。自己のアイデンティティはどこにあるのか。引き裂かれた心象風景が両性具有の人物になっているという説もあるようです。
子どもの心のままで大人になってしまったパスキン。社交性と冷徹な観察者の目をともに持つゆえの引き裂かれた自我。
長年の愛人だったリュシーへ、“Adieu Lucy”(さらば、リュシー)とメッセージを残して、自宅のアパルトマンで自殺。享年45歳。
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ちょうど昨日、新国立美術館で「異邦人たちのパリ展」を
みてきたところでした。
パスキンは油絵が2点、展示してありました。
リュシー以外にも愛人がたくさんいたようで、愛した女性の絵も
たくさん残っているようですが、素敵な絵ですね。
私も描いてもらいたい(笑)と思いました。
切ないです。。
ジェラール・ドゥ・ネルヴァルも「オーレリア」でオーレリアへの想い
を綴った後、自殺しますけど
愛することが絶望に向かわせてしまう(自殺・・)というのは
切ないことですね。。
六本木ミッドタウンにも寄りました。
ヒルズよりも街にうまく同化してゆけるのでは(?)と思いました。
昔から好きな場所なのでそう感じたのかもしれません。
ps
takeさん、リンクをさせていただてもよろしいですか?
良いタイトルですね、異邦人+パリ・・・このタイトルだけでも集客を高めそうですね。
自殺するに際し、誰にメッセージを残すのか・・・配偶者や親、兄弟ではなく、愛人。いかにもアムールの国らしいですよね。
リンク、ありがとうございます。よろしくお願いします。
ブログを見て、早速 今日(8日)マイヨール美術館に行って来ました。
普段は美術館に展示されてる絵を写真に撮ることはしないのですが、(何しろパリ在住ですし)今日はばしばし撮りました。
あれもこれも、本当に素晴らしく、個人的にインスピレーションというか教えられるものがあり、嬉しかったです。
私も中年からOLを退職してパリに語学遊学、ひょんなことから今は画家の道を歩んでいる者です。
素適な展覧会を紹介していただいて有難うございます。
これからもお邪魔します。
コメントありがとうございます。画家の方の参考になれたとは、望外の幸せです。
パリに9年、人生の途中で新たな道へ・・・大先輩でいらっしゃいますね。これからも、弊ブログへのご訪問、コメント、よろしくお願いします。