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聖地日和 異境・異形21 島根県出雲・曽枳能夜神社

2009-12-31 23:42:00 | 活字の海(新聞記事編)
毎日新聞 2009年12月6日(日) 日曜くらぶ2面
神々の場所 21 島根県出雲・曽枳能夜神社
筆者:伊藤和史
サブタイトル:契約不履行 笛の音




曽枳能夜(そきのや)神社。

筆者も語るように。
その、ただならぬ呪術的な響きを持つ名の神社は。

遠く、神代にまでその歴史を遡ることが出来る神の御社(みやしろ)
である。

出雲大社を、平成11年以降に訪れたことのある方であれば。

その展示施設の一角に。
古代出雲大社に関する記述を、見ることが出来るだろう。
#模型もあったような気もするのだが、既に記憶が曖昧である。


古代。
今の出雲大社があった場所に。

高さ48mにも及ぶ、超高層の神殿があった、という。

この古代神殿は。
従来は伝承としてのみ、語り継がれてきた。
その並外れた高さは元より。
存在そのものが、言い伝えに過ぎないとされてきたのである。

それが。
平成11年の施設建設に先立つ発掘調査において。
巨大な柱跡が発見されたことから、俄かに現実のものとして
注目を集めるようになってきた。

何しろ。
地上高48mである。
(一説には、倍の96mだったという説もあるらしい)

15階建てのビルにも匹敵する高さの神殿が、古代の出雲には
聳え立っていた。

そう、考えるだけで。
スケールの大きな夢を描くことが出来るではないか。

そして。

曽枳能夜神社は。
この古代出雲神殿と、密接な繋がりを持つというのだ。


簡単に、その謂れを紹介しよう。

国津神(くにつかみ・地神)である大国主神が、天津神(あまつかみ・
降臨神)に屈して国を譲る際に。
せめてもの代償に要求したのが、天に聳え立つ御社である。

だが。
国を手にした高天原は、この誓約を反故にする。

果たして。

後世に。
垂仁天皇の皇子・本牟智和気(ほむちわけ)が唖(おし)として
生まれついた。

そのことの裏面に、約束を反故にされた大国主の祟りがあると
知った天皇は、その怒りを鎮めるべく出雲へ使節を遣わす。

その遣わした先こそが、曽枳能夜神社なのである。

その結果、たちどころに皇子の唖が治ったことを受けて。
天皇は、出雲へ当初の約束どおり大社を建立する。

それが、先に触れた古代出雲大社である。

※ 画像は、島根県HP「出雲大社古代高層神殿の謎」より


それだけの、由緒正しき歴史背景を持つ曽枳能夜神社ではあるが。

昨年。
そのご神体となる、神社から1キロほど離れた谷あいにある磐座、
「釜神さん」が、砂防ダムの建設の煽りを受けて、神社の境内へと
移転を余儀なくされたとのことである。

その昔。
大国主が、天津神にその地位を追われたように。

皮肉にも。
その大国主と縁を持つ曽枳能夜神社も又。
時代のうねりに巻き込まれるように、そのご神体を移さざるを
得なくなった訳である。

悲しいかな。
現世での人の営みには、神も抗う術を持たないのかもしれない。


その思いを確かめるように。

筆者は、敢えて境内にあるご神体ではなく、この「釜神さん」
へと詣でる。

それが、筆者の意思なのか。
案内してくれたという、氏子総代長の陰山昭氏の意思なのかは、
文面からは知る術も無いけれど。



今はもう。
祠(ほこら)が取り払われた「釜神さん」。

その前に立って。
筆者とともに参拝した現地の笛師・樋野氏が、弥生時代の出土品を
復元した土笛を吹く。

その音色が、神に届くのか否か。

判ろう筈も無いけれど。


人が、人の都合で。
勝手に、神のいましめす場所を移したりする行為を。

どこかで、神は嘆息交じりに笑いながら見ているのかもしれない。


(この稿、了)



(付記)

今年も、もうあと少しで終わりを告げ。
また、新しい年が幕を明けます。

今年一年間、この拙い文章のブログをお読みいただいた皆様。
ましてや、コメントを下さった皆様。

本当に、ありがとうございました。

一昨年のブログ立ち上げ以来。
ポツリポツリと書き続けてきた、このブログも。

5月以降は、(一応(笑))毎日更新を続けております。

その間には、交通事故との遭遇など色々なこともありましたが、
来年も何とか頑張って続けていきたいと思っています。

今年も、お世話になりました。
来年も、よろしくお願いします。


古代出雲大社の復元―失なわれたかたちを求めて
福山 敏男
學生社

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