島々や千々に砕けて夏の海 芭 蕉
おもしろみのない、説明的な句にとどまっている。そうした点が不満で、『奥の細道』にもとられなかったものであろう。
土芳編の『蕉翁文集』に、「松島前書」として載せた次の文章の末尾に掲出し、「此の前書・句、細道になし。別而しるされ侍るか、いかが。反故書捨の中より見出でて、此に出だし侍る」と付記する。
「松島は好風扶桑第一の景とかや。古今の人の風情、此の島にのみ思ひ
寄せて、心を尽くし、巧みをめぐらす。およそ海の四方三里ばかりにて、
さまざまの島々、奇曲天工の妙を刻みなせるがごとし。おのおのの松
生ひ茂りて、うるはしきはなやかさ、いはむかたなし」
芭蕉が松島を訪れたのは、元禄二年五月九日。『奥の細道』には、「予は口をとぢて眠らんとしていねられず」とあり、句がなかったことになっており、『三冊子』にも、「師、松島に句なし」とある。
季語は「夏の海」で夏。
「見渡すと、松の生い茂った美しい島々が、自然の妙を刻んだように、
夏の海の紺青の中に砕け散っていて、まことにみごとな眺めだ」
漱石を読む文机の眠草 季 己
おもしろみのない、説明的な句にとどまっている。そうした点が不満で、『奥の細道』にもとられなかったものであろう。
土芳編の『蕉翁文集』に、「松島前書」として載せた次の文章の末尾に掲出し、「此の前書・句、細道になし。別而しるされ侍るか、いかが。反故書捨の中より見出でて、此に出だし侍る」と付記する。
「松島は好風扶桑第一の景とかや。古今の人の風情、此の島にのみ思ひ
寄せて、心を尽くし、巧みをめぐらす。およそ海の四方三里ばかりにて、
さまざまの島々、奇曲天工の妙を刻みなせるがごとし。おのおのの松
生ひ茂りて、うるはしきはなやかさ、いはむかたなし」
芭蕉が松島を訪れたのは、元禄二年五月九日。『奥の細道』には、「予は口をとぢて眠らんとしていねられず」とあり、句がなかったことになっており、『三冊子』にも、「師、松島に句なし」とある。
季語は「夏の海」で夏。
「見渡すと、松の生い茂った美しい島々が、自然の妙を刻んだように、
夏の海の紺青の中に砕け散っていて、まことにみごとな眺めだ」
漱石を読む文机の眠草 季 己