壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

松島

2011年07月09日 00時06分37秒 | Weblog
       島々や千々に砕けて夏の海     芭 蕉

 おもしろみのない、説明的な句にとどまっている。そうした点が不満で、『奥の細道』にもとられなかったものであろう。
 土芳編の『蕉翁文集』に、「松島前書」として載せた次の文章の末尾に掲出し、「此の前書・句、細道になし。別而しるされ侍るか、いかが。反故書捨の中より見出でて、此に出だし侍る」と付記する。
    「松島は好風扶桑第一の景とかや。古今の人の風情、此の島にのみ思ひ
     寄せて、心を尽くし、巧みをめぐらす。およそ海の四方三里ばかりにて、
     さまざまの島々、奇曲天工の妙を刻みなせるがごとし。おのおのの松
     生ひ茂りて、うるはしきはなやかさ、いはむかたなし」

 芭蕉が松島を訪れたのは、元禄二年五月九日。『奥の細道』には、「予は口をとぢて眠らんとしていねられず」とあり、句がなかったことになっており、『三冊子』にも、「師、松島に句なし」とある。

 季語は「夏の海」で夏。

    「見渡すと、松の生い茂った美しい島々が、自然の妙を刻んだように、
     夏の海の紺青の中に砕け散っていて、まことにみごとな眺めだ」


      漱石を読む文机の眠草     季 己