将 進 酒 李 白
君不見 君見ずや
黄河之水天上来 黄河の水 天上より来たるを
奔流到海不復回 奔流 海に到って復た回(かえ)らず
君不見 君見ずや
高堂明鏡悲白髪 高堂の明鏡 白髪を悲しむを
朝如青糸暮成雪 朝(あした)には青糸の如きも暮には雪となる
人生得意須尽歓 人生の得意すべからく歓を尽くすべし
莫使金樽空対月 金樽をして空しく月に対せしむるなかれ
天生我材必有用 天 我が材を生ずる必ず用有り
千金散尽還復来 千金散じ尽くせば還(ま)た復(ま)た来らん
君よ、見たまえ。
黄河の水は、天上から流れ下ってくるのを。
その黄河の激しい流れは、海に流れ込むと再びもどってはこないのだ。
君よ、もう一度、見たまえ。
立派な家で、明るい鏡に映った白髪を悲しんでいるその姿を。
朝には黒糸のような髪も、夕方には雪のように白くなってしまうのだ。
人生は楽しめるうちに、思いのままに歓びを尽くしておくことだ。
立派な酒樽を、いたずらに月に向けておくことはないだろう。
天が、わたしという人間に才能を与えてくれたのは、必ず何らかの役にたてさせるためだ。
たとえ、千金を使い果たしても、いつかは廻りめぐって戻ってくるものだ。
題の意味は、酒を酌んで客にささげること、といわれている。
いつごろ作られたのか、諸説があり、確実な根拠はない。
この詩は、酒の賛歌である。大いに酒を飲み、人間の背負う無限の憂愁を忘れようというのだ。下戸の変人にとっては、実にうらやましい限りである。
起句の「君見ずや 黄河の水 天上より来たるを」の着想は、奇抜であるとともにスケールが大きい。このような奇想天外な着想は、李白の特性であり、「白髪三千丈」などは、日本人に馴染み深い。
「安野光雅 絵本 三国志展」へ行って来た。
日本橋・高島屋の美術の方から、招待券をいただいたので、一応、見ておこうと軽い気持ちで出かけた。ところが、ところが、軽く流すつもりが、一点ずつ、メガネを外して近くで、またメガネをかけて離れて観る。これを全作品93点について凝視したので、心地よい疲れがドッと出た。
第1点目「三国揺籃(黄河長流 一)の解説に、作者自身こう書いている。
天より来る水を集めて海に消える黄河のように、人は
生き、人は黄河にはぐくまれて、かけがえのない歴史を
つづっては消えた。なかでも「三国志」は、私たち日本人
にも深いつながりを持つ人間世界のドラマである。中国
の大地に立って描くうちに、あの黄河の土を絵の具にし
て描こうと突然、思った。
「三国揺籃」は、黄河の長流を描いたものだが、この絵の賛のように「将進酒 李白」と、題と作者名を書き、「朝如青糸暮成雪」までの詩が書かれている。
なんと澄みきった心境であろう。何も考えられなくなり、涙がこぼれそうになってくる。
第1点目から、こうだ。これが全作品93点あるのだ。(つづく)
※ 19日(月)まで。日本橋・高島屋、8階ホール。
ぜひ、おすすめしたい。
ふりむけば誰もをらぬよ櫻葉に 季 己
君不見 君見ずや
黄河之水天上来 黄河の水 天上より来たるを
奔流到海不復回 奔流 海に到って復た回(かえ)らず
君不見 君見ずや
高堂明鏡悲白髪 高堂の明鏡 白髪を悲しむを
朝如青糸暮成雪 朝(あした)には青糸の如きも暮には雪となる
人生得意須尽歓 人生の得意すべからく歓を尽くすべし
莫使金樽空対月 金樽をして空しく月に対せしむるなかれ
天生我材必有用 天 我が材を生ずる必ず用有り
千金散尽還復来 千金散じ尽くせば還(ま)た復(ま)た来らん
君よ、見たまえ。
黄河の水は、天上から流れ下ってくるのを。
その黄河の激しい流れは、海に流れ込むと再びもどってはこないのだ。
君よ、もう一度、見たまえ。
立派な家で、明るい鏡に映った白髪を悲しんでいるその姿を。
朝には黒糸のような髪も、夕方には雪のように白くなってしまうのだ。
人生は楽しめるうちに、思いのままに歓びを尽くしておくことだ。
立派な酒樽を、いたずらに月に向けておくことはないだろう。
天が、わたしという人間に才能を与えてくれたのは、必ず何らかの役にたてさせるためだ。
たとえ、千金を使い果たしても、いつかは廻りめぐって戻ってくるものだ。
題の意味は、酒を酌んで客にささげること、といわれている。
いつごろ作られたのか、諸説があり、確実な根拠はない。
この詩は、酒の賛歌である。大いに酒を飲み、人間の背負う無限の憂愁を忘れようというのだ。下戸の変人にとっては、実にうらやましい限りである。
起句の「君見ずや 黄河の水 天上より来たるを」の着想は、奇抜であるとともにスケールが大きい。このような奇想天外な着想は、李白の特性であり、「白髪三千丈」などは、日本人に馴染み深い。
「安野光雅 絵本 三国志展」へ行って来た。
日本橋・高島屋の美術の方から、招待券をいただいたので、一応、見ておこうと軽い気持ちで出かけた。ところが、ところが、軽く流すつもりが、一点ずつ、メガネを外して近くで、またメガネをかけて離れて観る。これを全作品93点について凝視したので、心地よい疲れがドッと出た。
第1点目「三国揺籃(黄河長流 一)の解説に、作者自身こう書いている。
天より来る水を集めて海に消える黄河のように、人は
生き、人は黄河にはぐくまれて、かけがえのない歴史を
つづっては消えた。なかでも「三国志」は、私たち日本人
にも深いつながりを持つ人間世界のドラマである。中国
の大地に立って描くうちに、あの黄河の土を絵の具にし
て描こうと突然、思った。
「三国揺籃」は、黄河の長流を描いたものだが、この絵の賛のように「将進酒 李白」と、題と作者名を書き、「朝如青糸暮成雪」までの詩が書かれている。
なんと澄みきった心境であろう。何も考えられなくなり、涙がこぼれそうになってくる。
第1点目から、こうだ。これが全作品93点あるのだ。(つづく)
※ 19日(月)まで。日本橋・高島屋、8階ホール。
ぜひ、おすすめしたい。
ふりむけば誰もをらぬよ櫻葉に 季 己