壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

いちじく

2008年09月29日 21時53分02秒 | Weblog
 九月も余すところ一日。
 このブログもこの元日から一日も欠けることなく、九ヶ月。
 三日坊主が、よくも続いたものである。
 これもみな、読んでくださる皆様がおられる御蔭。深く感謝申し上げます。

 九月も末ともなると、果物屋の店先に、無花果(いちじく)を見かけることが少なくなった。本来、無花果は、八月末から九月にかけての果物である。つまり、台風シーズンの果物ともいえる。
 四、五年前のことだが、台風で垣根が無残に吹き倒された屋敷内に、無花果の木が露わに見えている、という光景に出くわしたことがある。
 惜しいことに無花果の実は、その根方にぽたぽたと落ちて散らばっていた。せっかく熟したのが、ぐしゃっと潰れている。折れやすい無花果の枝が、無残な裂け目から、白い樹液をしたたらせていた。

 無花果は、小アジアを原産地とするクワ科の落葉小高木で、江戸時代の初め、寛永年間(1624~1644)に中国から渡来したとのことである。
 イチジクという名が、何を意味しているのかは知らないが、花無き果(このみ)の意の無花果という当て字は、植物学的にいって、必ずしも正しくない。
 無花果と書くが、花がないわけではなく、嚢(ふくろ)状になった花托の内側には、無数の白色の小花と肉果があるのだが、花嚢の先端に小さな穴が開いているだけで、内部の花を外から見ることが出来ないだけなのだ。
 実は食用となるが、われわれが美味しく食べているのは、肉の多い花托の部分なのである。

 聞いたところによると、無花果には在来種の他に、実にたくさんの品種があるとのこと。
 わが国で栽培されている無花果は、いずれも生食が目的の果物として、アドリア種のものが多く、干し無花果を作るスミルナ種のものは、ほとんど欧米からの輸入品に限られているようだ。

 無花果の茎や葉を切ると、白い乳液が出る。これは痔やイボに効き、乾燥した葉を煎じて飲むと駆虫効果があるといわれている。

        呆けたりや熟無花果の脳を食ふ     澄 雄
 まさか、突然呆けたわけではなかろうが、在職五日で、大臣を辞める羽目に陥った方がいる。無花果のように、本心を隠しておけばよいものを、本心をむき出しにしたために……。


      無花果の割れて辞表を出すことも     季 己