最近、地下鉄の車内でカレンダーを持つ人を、チラホラ見かけるようになった。
これが、十二月の声を聞くようになると、来年の暦やカレンダーが、どっと出回るようになる。来年用の暦が出てくると。今年ずっと使用してきた暦は、「古暦」ということになる。したがって、古暦は冬の季語。
江戸時代には、暦は右巻きの巻物であったので、「暦巻く」も季語である。巻収めが軸元になるので、これを「暦の果」という。ここには、一年の果てんとする感慨が込められている。
闇の夜に終る暦の表紙かな 蕪 村
一日もおろそかならず古暦 虚 子
古暦水はくらきを流れけり 万太郎
無事泰平に過ごしてきた人も、その日その日に追われていた人も、またたくうちに一年の暦を繰りつくして、月日の経つのは、早いものだということになる。まことに「一日もおろそかならず」の年末である。
「暦」という言葉は、「日読(かよ)み」、つまり「日を数える」という意味だと、『広辞苑』に書いてある。
変人宅では、母が愛用しているが、「日めくり」といって、一日一枚ずつをちぎってゆくカレンダーがある。中には金言・格言、英会話のフレーズ、数独など、頭の体操になる日めくりもある。
一日一枚ずつちぎってゆく「日めくり」、これこそが正真正銘の「暦(日読み)」であろう。
元来、人間は、人類の始まりから、日影の伸び縮み、月の満ち欠け、草木の栄枯などから季節の移り変わりを悟って、生活の切り目をつけていた。
そのうち、特に天体の運行に一定の法則があることを知って、だんだんと正確な時の観念を持つようになり、長年の経験から将来を予言することも出来るようになってきた。
人間が狩猟・牧畜の時代から、農作・漁労の時代に入ると、その民族が正確な暦を持っているかいないかは、直接、その民族の栄枯盛衰を左右することになったのである。
古代の民族の中で、すぐれた暦を持った中国やエジプト・アラビア・ギリシャ・ローマなどの諸民族が、早くから文化の華を咲かせたのも、そういう訳があってのことであった。
そういうわけで、暦というものは、しだいにその内容も科学的に進歩してきたことに相違ない。国家・民族などの社会生活において、また個人の日常生活においても、暦というものが、船における羅針盤のように、重要な役割を果たしていることは、昔も今も変わりはない。
板壁や親の世からの古暦 一 茶
親あるうち癒えむとおもふ暦果つ 蕪 城
ゴヤの裸婦一枚残し暦果つ 蒼 水
というような、暦もあり、さまざまな生活が見えてくる。
たましひの余白少しく古暦 季 己
これが、十二月の声を聞くようになると、来年の暦やカレンダーが、どっと出回るようになる。来年用の暦が出てくると。今年ずっと使用してきた暦は、「古暦」ということになる。したがって、古暦は冬の季語。
江戸時代には、暦は右巻きの巻物であったので、「暦巻く」も季語である。巻収めが軸元になるので、これを「暦の果」という。ここには、一年の果てんとする感慨が込められている。
闇の夜に終る暦の表紙かな 蕪 村
一日もおろそかならず古暦 虚 子
古暦水はくらきを流れけり 万太郎
無事泰平に過ごしてきた人も、その日その日に追われていた人も、またたくうちに一年の暦を繰りつくして、月日の経つのは、早いものだということになる。まことに「一日もおろそかならず」の年末である。
「暦」という言葉は、「日読(かよ)み」、つまり「日を数える」という意味だと、『広辞苑』に書いてある。
変人宅では、母が愛用しているが、「日めくり」といって、一日一枚ずつをちぎってゆくカレンダーがある。中には金言・格言、英会話のフレーズ、数独など、頭の体操になる日めくりもある。
一日一枚ずつちぎってゆく「日めくり」、これこそが正真正銘の「暦(日読み)」であろう。
元来、人間は、人類の始まりから、日影の伸び縮み、月の満ち欠け、草木の栄枯などから季節の移り変わりを悟って、生活の切り目をつけていた。
そのうち、特に天体の運行に一定の法則があることを知って、だんだんと正確な時の観念を持つようになり、長年の経験から将来を予言することも出来るようになってきた。
人間が狩猟・牧畜の時代から、農作・漁労の時代に入ると、その民族が正確な暦を持っているかいないかは、直接、その民族の栄枯盛衰を左右することになったのである。
古代の民族の中で、すぐれた暦を持った中国やエジプト・アラビア・ギリシャ・ローマなどの諸民族が、早くから文化の華を咲かせたのも、そういう訳があってのことであった。
そういうわけで、暦というものは、しだいにその内容も科学的に進歩してきたことに相違ない。国家・民族などの社会生活において、また個人の日常生活においても、暦というものが、船における羅針盤のように、重要な役割を果たしていることは、昔も今も変わりはない。
板壁や親の世からの古暦 一 茶
親あるうち癒えむとおもふ暦果つ 蕪 城
ゴヤの裸婦一枚残し暦果つ 蒼 水
というような、暦もあり、さまざまな生活が見えてくる。
たましひの余白少しく古暦 季 己