若竹屋酒造場&巨峰ワイナリー 一献一会 (十四代目日記)

何が酒の味を決めるのか。それは、誰と飲むかだと私は思います。酌み交わす一献はたった一度の人間味との出逢いかもしれません。

今村昌平監督がお亡くなりに… (楢山節考)

2006年06月01日 | 読んでる十四代目
 
今日の新聞で映画監督の今村昌平さんがお亡くなりになった事を知りました。

僕は今村監督の「楢山節考」が大好きです。日本映画の中で最も好きな作品の一つです。公開された'83年には観ていなかったのですが、経営の師である明賀先生に薦められてビデオで観たのでした。もう15年ほど前のことです。

物語は、姥捨て伝説をモチーフにしたものです。山深い寒村に生きる人たちの、貧しくも明るい、そして切ない姿を描いています。

老いた者は子に背負われて楢山に捨てられなければならない。そんな掟のある村にも春が来れば祭りもあるし、若者たちは恋にも落ちる。坂本スミ子演じる「おりん婆さん」は間もなく山に行かねばならない。長男(緒方拳)には働き者の嫁(あき竹城)が来たのでひと安心。

次男(左とん平)は稼ぎもなく醜男だから嫁の来てもないから心配だ。コイツは憧れの女(確か、倍賞美津子)に夜這いをかけるも失敗するので、仕方なく女の飼い犬を犯す始末(笑)。あんまり可愛そうなので、おりんは友だちの婆さん(清川虹子!)に相手を頼む。「もう長い事使ってないで、役に立つやら…」と言いながら引き受けたりする婆さん(爆笑ものです)。

いよいよ、おりんも楢山へ向かわねばならない日がやって来た。「俺を山へ連れて行け」と母は自ら言う。小さく軽くなった老いた母を背負い、山へ向かう長男。道すがらに母との思い出や苦しい生活の日々が蘇る。

「ここでいい」と死地を定めた母。ひどく寒い。母を捨てることと、村の掟、つまりは貧しさとに葛藤する息子。そんな息子に向かって深々と合掌する母。振り切るように帰途へつくなか、とうとう雪が降ってきた。…たまらずに母を置いた場所へ戻る息子…。

もう、何と言うか、泣けるんです。露骨な性描写や残酷に見えるシーンが好悪の分かれる所かもしれませんが、人間への今村監督の深い興味と讃歌を感じました。自然の厳しさと人間のたくましさ、あらゆる生命の循環が価値であることをこの映画は教えてくれました。

今村監督のご冥福をお祈りします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。