一時期の加熱気味の焼酎ブームは落ち着いたようです。市場で求められている商品は、希少性の高い焼酎と、とにかく芋なら安いほどいい、という二極化が進んでいます。そんな現在より少し前、芋焼酎ブームが最高潮の頃の話です。。。
ある芋焼酎メーカーがメディアに乗ってマボロシ化した。関東地方を中心に出荷量が急増し品薄状態になる。そこでこの会社は既存取引先への出荷調整を始めた。
僕らの親しくしているT酒店は、焼酎ブームのはるか昔より、日本酒とともに「国酒」として焼酎の市場開拓に力を入れてきた。焼酎は清酒の格下酒じゃない。素晴らしい焼酎はたくさんあるんだ。その酒販店のT社長の姿勢と努力はもとよりお人柄も素晴らしく、僕はこの業界の師のひとりと仰いでいる。
さて、そのT酒店で前述のメーカーに注文した商品が、発注どおりに入ってこない。中でも季節企画商品は発注数量に対して、入荷がゼロだった。たまらずメーカーに連絡入れた。
どうして発注通りに入荷されないんですか?
「申し訳ありません。在庫がないのです」
それにしてもゼロはないでしょう!
「その商品については、お宅は前年の発注実績がありませんので」
バカな!前年は案内がなかったじゃないですか!
「案内をしなくても問合せのあった所には出荷をしました」
案内もなく、連絡もなかったから発注しないままだったのは認めるが、
それを前年実績がないから出荷できないとは…わかりました、もう結構です。
そのメーカーはT酒店にとって既に売上上位の人気商品となっていたが、社長は決断を下しました。うちの主力商品とはしない、と。
一方、別の芋焼酎蔵元がある日このT酒店を訪れた。この蔵の銘柄もすでに希少銘柄として市場で人気を博していた。その蔵元はこう言った。
「T社長、お店にはいつもご愛顧いただきありがとうございます。社長たちのこれまでの地道なご努力のおかげで、我社の酒もようやく売れるようになりました。お蔭様でお取引のご要望が引きも切らない状況です。こうなれたのも社長のおかげです。これからもご発注の通りに納品しますので、どうぞ儲けて下さい」
T社長はこう言います。
林田君、僕らは蔵元さんたちと信頼関係を取引の拠り所にしているんだ。こんな小さな店(とT社長は謙遜するが、そんな事はない)が出来る事、しなければならない事は、商品を通してこの国の素晴らしい文化を伝える事なんだ。だから想いのある蔵元としか「商い」は出来ないんだよ。僕らがしているのは「ビジネス」じゃないから…。
ブームになること。人気が出ること。ブランド化すること。最大利益を生み出すこと。それらは経営者が望んでいることだけれど、そうなる事によって、大切な事を見失ってしまう企業のなんと多い事か。
若竹屋は「一流企業」や「大企業」になろうとは思っていない。
僕は「超一流の家業」となることを目指したいと思うのです。
ある芋焼酎メーカーがメディアに乗ってマボロシ化した。関東地方を中心に出荷量が急増し品薄状態になる。そこでこの会社は既存取引先への出荷調整を始めた。
僕らの親しくしているT酒店は、焼酎ブームのはるか昔より、日本酒とともに「国酒」として焼酎の市場開拓に力を入れてきた。焼酎は清酒の格下酒じゃない。素晴らしい焼酎はたくさんあるんだ。その酒販店のT社長の姿勢と努力はもとよりお人柄も素晴らしく、僕はこの業界の師のひとりと仰いでいる。
さて、そのT酒店で前述のメーカーに注文した商品が、発注どおりに入ってこない。中でも季節企画商品は発注数量に対して、入荷がゼロだった。たまらずメーカーに連絡入れた。
どうして発注通りに入荷されないんですか?
「申し訳ありません。在庫がないのです」
それにしてもゼロはないでしょう!
「その商品については、お宅は前年の発注実績がありませんので」
バカな!前年は案内がなかったじゃないですか!
「案内をしなくても問合せのあった所には出荷をしました」
案内もなく、連絡もなかったから発注しないままだったのは認めるが、
それを前年実績がないから出荷できないとは…わかりました、もう結構です。
そのメーカーはT酒店にとって既に売上上位の人気商品となっていたが、社長は決断を下しました。うちの主力商品とはしない、と。
一方、別の芋焼酎蔵元がある日このT酒店を訪れた。この蔵の銘柄もすでに希少銘柄として市場で人気を博していた。その蔵元はこう言った。
「T社長、お店にはいつもご愛顧いただきありがとうございます。社長たちのこれまでの地道なご努力のおかげで、我社の酒もようやく売れるようになりました。お蔭様でお取引のご要望が引きも切らない状況です。こうなれたのも社長のおかげです。これからもご発注の通りに納品しますので、どうぞ儲けて下さい」
T社長はこう言います。
林田君、僕らは蔵元さんたちと信頼関係を取引の拠り所にしているんだ。こんな小さな店(とT社長は謙遜するが、そんな事はない)が出来る事、しなければならない事は、商品を通してこの国の素晴らしい文化を伝える事なんだ。だから想いのある蔵元としか「商い」は出来ないんだよ。僕らがしているのは「ビジネス」じゃないから…。
ブームになること。人気が出ること。ブランド化すること。最大利益を生み出すこと。それらは経営者が望んでいることだけれど、そうなる事によって、大切な事を見失ってしまう企業のなんと多い事か。
若竹屋は「一流企業」や「大企業」になろうとは思っていない。
僕は「超一流の家業」となることを目指したいと思うのです。