若竹屋酒造場&巨峰ワイナリー 一献一会 (十四代目日記)

何が酒の味を決めるのか。それは、誰と飲むかだと私は思います。酌み交わす一献はたった一度の人間味との出逢いかもしれません。

峠 司馬遼太郎 (指を痛めて思い出した)

2005年07月01日 | 読んでる十四代目
峠 (上巻)

新潮社

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←3日前ドアに右手中指を挟んだ。みるみるうちに腫れて爪の内側が黒ずんでいく。余りの痛さと間抜け具合に笑い泣きをしました。そんな痛みの中、ふと思い出したのが、司馬遼太郎「峠」の一節。

越後長岡藩士・河井継之助が備中松山藩・山田方谷を訪ねる途中、京に立ち寄る。そこで出逢った不思議な女性・織部と一夜を共に。房事の後に織部が継之助の小指をきゅっと折る。痛みに耐えながら継之助が思うこと…。

(人間など、他愛もない)
と継之助が思わざるのをえないのは、そのわずか一本の小指の痛みで、いかに深刻な、あるいは深遠な、そういう思案も煙のように消え、全身の関心が小指にあつまってしまう。となれば、つまり小指一本でその思念が雲散霧消するとなれば人間ははたして継之助が考えるほどに高いいきものなのであるか、どうか。

「峠」は司馬遼太郎作品の中で「世に棲む日日」についで僕の好きな本です先日、萩へ行ったので、また改めて「世に棲む日日」を読み返そうと思っていたのですが、書棚から手に取ったのは「峠」になってしまいました。先月、久留米JCのOB・柳田さんと飲んでる時も河井継之助の話になったのもきっかけか。「今読み返すと『峠』はやっぱり面白いよね、初めて読んだ時の感動とともに、別の気付きがたくさんあったよ」と柳田さんがいいます。

同席していた高知同友会の梼原君が、「僕はホンダの藤沢武夫が書いた『経営に終わりはない』が座右の書です」なんて言うものだから、また盛り上がって。どちらも僕の大好きな本。気の会う仲間は同じものを読んでるんだなぁ、なんて大笑い。

さて、河井継之助は幕末の人物なのですが、坂本竜馬や西郷隆盛のように知られた人物ではありません。吉田松陰や高杉晋作のように「陽明学」に学んだ人物。尊皇攘夷という世の流れを「流行」と断じながらも、封建制度の崩壊を予見している。長岡藩の財政建て直しに辣腕を振るい見事に再建を果たすが、それは同時に士制の存在意義を失くすことでもあった。様々な矛盾に悩み苦しみながらも長岡藩士としての生き方を貫こうともがく。無骨で豪放磊落、奇人だがなんだか美しい。司馬遼太郎の描く継之助はなんとも魅力的な漢なのです。


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1 コメント

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書き込みありがとうございました (アサコ)
2005-07-06 20:11:09
はじめまして、こんにちは。



方言の方には興奮してしまってスゴイ勢いでレスを

つけてしまいました(苦笑)。



そして、指負傷仲間がここにもひとり…。



実は私の母も負傷しておりまして、

黄緑のマニキュアで隠そうとがんばったところ

逆にカメムシになりました。

左手の親指が、カメムシです。



常々、司馬遼太郎をまとめて読みたいけれど

どれからはじめよう、と思っておりました折、

これもなにかの御縁。

ぜひ峠を読み始めたいと思います。



また遊びにいらして下さい。
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