若竹屋酒造場&巨峰ワイナリー 一献一会 (十四代目日記)

何が酒の味を決めるのか。それは、誰と飲むかだと私は思います。酌み交わす一献はたった一度の人間味との出逢いかもしれません。

万事困難は己の心中に有り

2005年06月08日 | ものおもう十四代目
今日は浮羽町内の酒販店廻りをしました。どの酒販店を廻ってもお店の人の口から漏れるのは「売れなくて苦しい」という言葉です。確かにこの不況の中での実感に違いありません。けれど、やっぱり、ちょっと残念な気持ちがしました。

今から8年前にハウステンボスの創始者である神近義邦さんから頂いた本「ハウステンボス物語」に一筆メッセージを書き添えていただいた事があります。そこにはこう書かれています。「万事困難有己心中」。神近さんは定時制高校を卒業後、長崎県西彼町役場に就職しました。

神近さんは一職員に過ぎないにもかかわらず町づくりについて町長と何度も対立し、とうとう町役場を辞めてしまいます。世代が交代しながら1000年を生き続ける街を創る。それが神近さんの壮大な夢でした。誰が聞いても馬鹿げているとしか思えないような構想を神近さんは幾度の困難を乗り越えながら実現に向けて活動してきたのです。

「メジ事件」と言われる有名な話があります。ハウステンボス宮殿にレンガを貼りつけているときオランダの宮内省がチェックに来ました。するとレンガとレンガの間のメジが本物の宮殿よりも2ミリ広いと判った。レンガは既に200平方メートル張られていました。しかし神近さんはレンガの張替えを指示しました。4000万円の費用をかけて、わずか2ミリの違いを直した。これにはオランダ政府も驚いたそうです。以後、オランダ女王はハウステンボス構想に全面的な支援を約束するのです。

本物を追求する神近さんの信念がオランダ女王をまで動かした、という事は僕達とはあまりにかけ離れた話かもしれませんが、彼の「生き方」に学ぶものは多くあります。何事も困難とは己の心の中にある。自分自身に限界をつくり言い訳をしていては成し遂げられるものは何もない、そう神近さんは言いたかったのではないでしょうか。

私たちにも若竹屋として、酒を通して人々の心を豊かにする、という信念と使命を持っています。酒販店さまたちが「若竹屋のお酒を売っていて良かった!」と思って頂く仕事をもっともっとしなければならない、そう思った一日でした。