すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

杉並・図書館  指定管理者制度、最大の対決点は

2010年03月03日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

   杉並区が区立の地域図書館12館の全館民営化を本年2010年度から来年2011年度にかけての指定管理者制度実施の一方的決定と執行で強行しようとしていることから私たちは昨年夏以来、反対の声をあげ、絶対反対・白紙撤回を訴えてきました。その取り組みの中で実感したのは反対運動での四つの面でした。

 (1)一つは、指定管理者制度導入の動きを知った利用者(地域の労働者住民)の図書館民営化に対する反対意思と危機感が非常に大きいこと。

 (2)二つは、指定管理者制度実施で職場を追われ図書館での仕事を奪われる常勤・非常勤の職員が現場で不安と危機感と怒りを感じながらも、こういうときにこそ寄る辺とし結集軸となるべき労働組合(杉並区職労)が反対闘争に正面から取り組むことを放棄し、逆に反対運動が区との一歩も譲れない攻防に発展することを予防し闘争収拾をはかるブレーキの役割を果たしたこと。その中で職員の皆さんが非常にくやしい、厳しい状況に立たされていること。

 (3)三つは、図書館の専門性・社会的意義に立脚した綿々たる長い歴史のある図書館運動が存在し、「よりよい図書館」は指定管理者制度の中にはないことを明らかにして「図書館をもっとよくする」一つの社会的運動をめざして実践していること

 (4)四つは、すでに進行している民営化政策のもとで業務委託や先行的な指定管理者制度実施で図書館で働いている民間から派遣されている労働者(契約社員、パート、アルバイト)が社会的にみて著しい低賃金と1年刻みの雇用契約をはじめ大変な労働条件を強いられていること。

 図書館の管理・運営への指定管理者制度導入に対する反論で必ずあげあられる論拠として、国=文科省見解でも「図書館は民営化、指定管理者制度になじまない」ということが強調されています。導入しないと明示に確認している自治体も相当の多数に上ることが図書館協議会や図書館協会の報告でも明らかにされています。しかし、ここ杉並区や知事評価で導入に舵をきろうとしている北海道をはじめ「経費削減(コストダウン)」「サービス向上」を掲げて導入する動きは依然激しいものがあります。

 杉並区の場合、四月から6館が指定管理者制度のもとにおかれる中で、あらためて図書館指定管理者制度実施、さらに指定管理者制度そのものについて対決点を整理し明確にして図書館で働く仲間と地域の住民(労働者住民)がひとつの闘いとして取り組むことの大切さについて痛感しています。

 このかん、当サイトでは業務委託または指定管理者制度のもとでの図書館で働く労働者の賃金と勤務時間、雇用契約の具体的問題を実際の企業A社からD社までの4社の求人情報を手がかりに、図書館で働く労働者の労働条件を重視してきました。指定管理者制度を考える場合に、そこに特別の基軸的な意味があるからにほかなりません。なぜなら指定管理者制度とは、

 ①公の施設の利用時間延長など施設運営面でのサービスの向上による施設利用者の利便性の向上

 ②管理運営費の削減、施設を所有する地方公共団体の財政節減

の二点を直接の具体的立法趣旨として地方自治法改正(2003年)で定められたシステムだからであり、管理運営費と職員数の削減、職員人件費の削減を真の狙いとしてスタートした行革制度だからです。

  「低コスト良質サービス」という綺麗ごとを掲げ、実態はもっと生々しく、いかに安上がり(低賃金)で、利便性の向上をうたっていかに労働力配置システムを変えるかが眼目だったわけです。指定管理者制度との闘いの軸足には、この労働者に対する賃金、労働時間等の労働条件の切り下げ、労働者の団結権の破壊に対する労働者の反撃が据えられる必要があります。公立直営と指定管理者制度のいずれが「利用者によりよいサービスを提供できるか」に指定管理者制度をめぐる真の争点、最大の対立点があるわけではないのです。

 高度情報社会化と労働者住民には労働・生活・福祉・環境・医療・法律等の複雑な生きづらさの中で地域の身近な図書館が「情報と資料・ツールの集積と提供」の施設として切実な意義を持ってきているのは確かです。しかし、「図書館をもっとよくするにはどうしたらいいか」という問題にしてしまうと指定管理者制度の攻撃の核心点を欠落させ、図書館を担い、支える労働者に労働強化を求めるという落とし穴に落ちることになります。私たちは現場の図書館労働者の闘いを中心にすえて区の全職場、全地域から指定管理者制度反対の声をあげていくことが最大の反撃になると考えています。次回は指定管理者制度推進論者がどんなことを言っているか、この点を通して指定管理者制度の狙いについてさらにみていきます。  

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