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博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

映画「ジャイアンツ」とメキシコ人差別

2017年02月26日 | 時事

 トランプ大統領の「メキシコの壁」への違和感を感じながらある映画を鑑賞すると特別な感慨を覚えます。その映画とは『ジャイアンツ』(ジョージ・スティーブンス監督 1956年 アメリカ映画)です。かのジェームス・ディーンが早すぎる死の直前、最後に出演した映画として有名です。有名な映画ですがご覧になったことのない方のために簡単にストーリーを紹介します。第一次世界大戦が終わって間もなくの頃、テキサス州の若き大牧場主ジョーダン・ベネディクト(ビック)に、東部ヴァージニア州の旧家の娘レスリーが嫁いできてから以降の約30年間を描いた長い長い物語です。

 レスリーが夜行列車を何泊も乗り継いで見た初めてのテキサス州は東部のヴァージニア州とは似ても似つかない土地でした。自然環境も、人々の習慣も、意識も、何もかも違うのでレスリーはショックを受けます。何よりも耐えがたかったのはテキサス州の人々のマイノリティ(主にメキシコなどのヒスパニック系の人々)への強烈な差別意識でした。愛するビックも差別意識の塊でした(ただし悪い人物ではないらしい)。私なら欝になったかもしれませんが、レスリーの偉いところは、そういう人々の意識を、やがて生まれてくる子供たちと共に何十年もかけて変えていったことです。

 特に心に残った逸話は次のものです。

 レスリーは、ビックの牧場に到着すると、従業員のジェームス・ディーン演ずるジェットに牧場を案内されます。その時メキシコ人の使用人一家を紹介されます。レスリーが訪問した時、そのメキシコ人一家の小さな男の子が高熱を出して危篤状態でした。ビックはメキシコ人使用人の家族がどうなろうと気にも留めません。しかしレスリーの機転で、男の子は病院で治療を受け回復できたのでした。ビックの牧場で生まれたその男の子は、一家でただ一人のアメリカ合衆国民です(米国内で出生したので)。やがてその男の子はレスリーの力添えも得て、すくすく成長し成人します。立派なアメリカ国民です。そして成人したと同時に太平洋戦争が勃発し(何という不幸なタイミング!)、日本との戦争に男の子は当然のことながら召集されます。立派なアメリカ国民ですから。そして男の子は遺骨となって戻ってきます。一家には小さく折り畳まれた「星条旗」が手渡されます。その小さく折り畳まれた星条旗が30年にわたって、アメリカで、テキサス州で差別されながらも身を粉にして働き、アメリカ国籍の息子を育て成人させた一家の得たものでした。

 この映画は1956年公開ですから、60年前の映画です。しかし米国のために日々つらい仕事でも黙々と働くメキシコ系の人々の、テキサス州など米国西南部での立場は、60年たった現在でも全く変わらないし、トランプ大統領の馬鹿げた施策でかえって悪化しているとさえ言えます。今こそ、この映画を多くの方々に見ていただきたいと思うのです。


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