10日ほど前に,カミさんが町の図書館から宇佐美りんの著書を2冊借りてきた。その内の1冊『推し,燃ゆ』( 集英社 2020年)の芥川賞を受賞が発表され,この本は返したら次に借りるまで1年以上かかることになるのでと,まわしてくれた。わたしは,日本の現代小説はほとんど読まないし,特に若い女性が書いたものは言葉遣いや扱われている題材がなじめなくて,ちょっと腰が引けたが,読み始めてみると面白く,最後まで読み通せた。
10代後半の少女の独白の形をとっている。この少女はアイドルに夢中になっていて,その生活や行動はすべてアイドル中心で動いている。学業も放棄し,高校は2年で挫折して中退している。家族にはあきらめられ,つながっているのは同じアイドルの追っかけ仲間だけである。応援するアイドルが彼らの「推し」である。
彼女はいう。「世間には,友達とか恋人とか知り合いとか家族とか関係性が沢山あって,それらは互いに作用しながら日々微細に動いていく。常に平等で相互的な関係を目指している人たちは,そのバランスが崩れた一方的な関係性を不健全だという。」そして,追っかけの対象としてのアイドルを愛していれば十分幸せだという。
この「推し」がフアンを殴打したことがきっかけで,所属するグループが解散し,彼は普通人と結婚し引退する。主人公はすべてをつぎ込んできた目標を失うところで小説は終わっている。
著者は21歳の大学生で,これが2作目ということだが,その文章力には目を見張るものがある。21歳という若さゆえに,小説の主人公に代表される現代の若者の情念を自分の中に取り込み,自身の言葉で表現できるのではないだろうか。若者たちが現在の社会に抱く閉塞感を考えさせられた。
小説の中には,ネット用語が頻繁に登場し,戸惑わされたが,その内の一つ「おっさん文体」というのには感心した。孫がわたしのブログを読んで,「文章が硬いね」と評したが,まさに「おっさん文体」なのであろう。
若者に、スマホを与えたが、負の遺産を、沢山残した、スマホより飯の種、仕事をかな?
小説は、目標を失ったところで、終わるようですが、今の社会に通じているのかな?
小生何をしていても「持続性」に欠け老化現象。「おっさん
文体」言い得て妙ですね。小生の如き典型的「アナログ
人間」が淘汰される時代になりましたね。然し「アナログ的
感性」は失いたくないですね。アナログ・デジタルのミックスが望ましいです。最近思う事は「知識」は安易に得ても
「知恵」が出ない若者の増加を感じる時があります。
アナログ人間の負け惜しみの呟きです。