グリーンブック(映画)
2018年にリリースされた,実話に基づいたアメリカ映画である。2019年のアカデミー作品賞,主演男優賞,助演男優賞を獲得している。11月14日にBSプレミアムで放送されたものを録画しておいて見た。
グリーンブックとは,黒人用の旅行ガイドブックで,黒人が利用可能なモーテル,ガソリンスタンド,レストランなどが示されている。この映画でも,主演の運転手がそれを参照しながら,移動している。
舞台は1962年,黒人差別が色濃く残っている時代である。
天才的な黒人ピアニストで,カーネギーホールの上のアパートメントに,召使とともに住むドン・シャーリーはアメリカ中西部からディープサウスを,8週間かけて演奏旅行することを計画する。そして,元クラブの用心棒で,失業中のイタリア系白人のトニー・ヴァレロンガを運転手として雇用する。
トニーには黒人差別の意識はないが,博士の学位を持っていて尊大なドンに反発する。ドンはトニーの粗野なふるまいに辟易し,しばしば叱正する。しかし,トニーはドンのピアノ演奏の見事さと,誇りを持ってもめごとに対処す態度に魅せられ,ドンはトニーのフランクな性格と職務に忠実な行動に心を許すようになり,二人の間には友情が芽生え,降りかかるトラブルを克服し,予定通りクリスマスイブにニューヨークに帰還する。
この映画の主題は「勇気」である。演奏家としては全米的に名声を博しているドン・シャーリーは,あえて黒人差別地域でのツアーに身をさらそうとする。旅行中に受ける不当な扱いに対しては,尊厳と非暴力で対峙する。
夜道を走っていた時,警官に止められ,黒人の夜間外出は禁止されていると文句をつけられ,かっとなったトニーは警官を殴り倒し,警察署に留置される。ドンはトニーの暴力をなじり,暴力では勝利は得られないと言う。そして,ロバート・ケネディ司法長官に電話して,知事から署長に圧力をかけさせて釈放させる。
車に戻ったドンは,司法長官に電話したことを恥じ入る。そんなドンにトニーは腹を立て,お前に比べれば,下町の長屋で,家族をやっと養っている「イタ公」の自分はもっと黒だと噛みつく。それに対し,車を降りて雨の中に立ったドンは,自分は演奏家として身分の高い人たちにちやほやされるが,そこを離れれば孤独なニガーに過ぎないと叫ぶ。
この場面と次の場面はこの映画のハイライトである。
最後の演奏地,アラバマ州のバーミンガムのホテルで,ドンはVIPとして迎えられる。しかし,与えられた楽屋は物置であり,トニーが一緒に食事をしようとしたレストランは,土地の風習だからと言って,ドンは入れてもらえない。ドンは,それならば演奏を拒否すると言い,困った支配人はトニーに金をわたしてドンへの説得を頼むが,激高したトニーは支配人を殴ろうとしてドンに止められ,ドンとともにホテルを去る。
その帰路,黒人が集まるレストランで食事をした二人は,余りにも立派な身なりで周囲から奇異の目で見られ,ドンのことを世界一のピアニストだというトニーの説明に,ウエイトレスに証拠を見せてとせがまれて,ドンはレストランのアップライトピアノでショパンの練習曲を弾く。
レストランの客はその音色に魅せられ,レストランにいたバンドマンたちとのセッションが始まり,ドンは孤独感から救われる。
難しいテーマを扱いながら,エンターテイメントとして演出したピーター・ファレリー監督の腕前は見事である。主演,助演のヴィゴ・モーテンセン,マハーシャラ・アリの演技はアカデミー賞に輝いただけのことがある。
一見の価値がある映画だ。(写真はいずれもテレビの画面を撮影)
源平咲き
赤と白を咲き分けた菊。源氏と平家が入り乱れている壇ノ浦というところか。(阿見町にて撮影)
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