セイタカアワダチソウ
土浦市(上)および阿見町(下)にて撮影
空き地や道端に,セイタカアワダチソウが黄色い花を着けている。わたしは,この植物は土地ころがしや耕作放棄農地の象徴のような印象を持っていて,余り好きではない。
典型的な帰化植物で,戦前には切り花用などで導入されたようだが,拡大したのは1960年代である。北アメリカの原産で,アメリカの駐留軍の荷物に種子が付着して入ってきたのではないかと言われている。
種子と地下茎の両方で繁殖するので,繁殖力が強くたちまち日本各地に広がっていった。花粉症の元凶と疑われたが,風で花粉が運ばれる風媒花ではなく,虫が受粉を媒介する虫媒花なので,これは冤罪であった。
根から他の植物の発芽や成長を阻害するアレロパシー物質を出すので,ほかの植物の群落に入り込んで駆逐し,セイタカアワダチソウだけの大きい群落を形成する。
クズの群落に入り込んだセイタカアワダチソウ。クズもアレロパシー物質を放出するので,両者の争いが始まる。(阿見町にて撮影)
種子がついた穂の様子が泡立っているように見えるので,背高泡立草というそのものずばりの,あまりロマンチックではない和名が付けられた。この種子は風に乗って遠くまで運ばれる。
帰化植物が繁殖するのは,彼らにとっての新天地に,天敵や病原体がいないからで,年月とともにそれらしい昆虫や菌が現れ,繁殖の勢いが止められる。セイタカアワダチソウもその運命にさらされ始めているらしい。
大学1年下のU君が,卒業論文で,日本各地に生育するコスモスの開花期を調査したところ,初霜が早く降りる地域のものほど早く咲くというきれいな結果が得られた。これは,日が短くなると開花する短日植物に共通する現象で,セイタカアワダチソウも調べてみるとそうなっているかもしれない。
そもそも花というのは,過酷な環境を乗り越えて種が存続するために種子を結ぶという役割を持っている。だから,霜が来ないうちに花を咲かせて種子を作る。そんな重大な役割をはたしているのも知らず,わたしたちは花を見て美しいという。
しかし,ヒトはなぜ花を美しいと思うのだろうか。ネアンデルタール人もデニソワ人も,花を美しいと感じていたろうか。
月食に見える?
自宅ベランダより11月8日19時2分撮影
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