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渋滞を解消するアプローチ

2011年08月22日 | 読書
 以前『渋滞学』という新書があるのを、書籍紹介などで見かけて、世の中には様々なことを研究する人がいるものだなあと、妙にその命名が気になっていた。
 でもなあちょっと難しそうだし…と進んで手を出すことはなかったが、先日書店で「知りたい!サイエンス」シリーズと銘打って、次のような本を見かけたので、これならと思い購読した。

 『クルマの渋滞 アリの行列』(西成活裕 技術評論社)

 筆者は『渋滞学』と同人物だし、図解なども豊富にあってわかりやすそうだ…と思ったが…まあ、多少難しいところもあり、理解度は半端なままに読了した。
 
 それでも、人に言ってみたくなるような雑学的な知識も多く、楽しめた本である。
 特に自分がかなり以前から抱いていた思い「踏み切り前で車が一時停止するのは無駄な行為ではないか」という事柄を取り上げてくれたのには、そうそうと肯きながら読み進めた。

 一時停止をして失った走行損失時間は約7秒であり、これは時価価値計算すると、日本全体で約1800億円になる。

 さらに二酸化炭素排出量も減り、省エネ効果も莫大なものになるという。事故分析も書かれているので実に納得できた。この交通法を定めている側にも言い分はあるのだろうが、海外ではノンストップが常識となっているというし、なんとかいい方向は見いだせないものか。

 とまあ、これ以外にも「フォーク待ち」や「しきい値」のことなど、なんとなく薀蓄にしたい事項がいくつもあり、感心させられた。

 ただそれ以上に興味を持った部分がある。

 筆者は都市交通などの分野において、全体的な統制によって渋滞を回避するのは限界があると考えている。いわゆるトップダウン型から部分的にもボトムアップ型を取り上げたほうがいいと提言している。
 具体的な方式は複雑だが、キーワードは「創発的アプローチ」。

 「創発」とは社会心理学の用語で、定義は以下の通りである。

 創発とは、部分が集まってできた全体が、単なる部分の総和とは質的に異なる高度なシステムになる現象のこと

 ここを読んでどうしても職業意識がでてくる。つまりは学校づくりや授業づくりにもつながる発想のように考えてしまうわけだ。

 渋滞学では、車や生物のことを「自己駆動粒子」と呼ぶ。
 自己駆動粒子の創発的なアプローチによって、渋滞(課題)を解消したり、渋滞ストレス(否定的な考え等)が緩和できたりするとしたら、これに勝るものはない。

 この本にある創発的アプローチができるようになるための条件を、教育の現状と照らし合わせてみたら…そんな読み方も興味深い。

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