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並存する作法を自分に伝える

2020年02月10日 | 読書
 よく言ったものだ。たった13人しかいない学級。女子にそりが合わない2人がいてトラブルになる。新任教師は「誰とでも仲良くすることなんてできない」と口にしたが、どう教えるかという技能はないままだ。全く恥ずかしい四十数年前の自分。この著のいう「並存する作法」を具現化させる術は持っていなかった。


 【友だち幻想】(菅野 仁  ちくまプリマー新書)

 この新書シリーズは中高生層をターゲットにしているだろう。ただ教育関係者にとってもかなり役立つ。特にこの著は10年以上前の発刊ではあるが、今の子どもたちを理解するためのエッセンスが詰め込まれている。同時に日本社会と家族や学校組織のあり方を考えさせてくれる。新しい「つながり」の提起である。


 筆者は私たちが今感じる「同調圧力」の背景をこう表現する。「日本社会はハード的部分(物的環境や法的な制度)では十分近代化したのかもしれませんが、ソフト的部分(精神面や価値観)ではまだまだムラ的な同質性の関係性を引きずっている」…仕組みと運用のギャップという難問には、最適解は見つからない。


 それにしても集団における人間関係をうまく乗り切るための原則みたいなものは見えている。一つは「他者性」の尊重と言える。身近な家族、知り合いから、言葉の通じない異国の人まで共通する。もう一つはそのためのコミュニケーションのとり方だ。個人差も大きく、ふるまいや表現技能として鍛える必要がある。


 筆者は「言葉によって自分をつくり変える」ことを提案している。共感した。今、四十数年前の自分に「並存する作法」を教える技として伝えるとしたら、次の三つになるか。「使ってはいけないコトバを相談して決める」「やり過ごすことも大事と強調する」「振り返りを必ず言語化させる」…ああ、やっていた事もあったか。