THE ARCTIC - オーロラの地を旅する

北欧北極圏、アイスランド、グリーンランドの旅行情報

Oqaatsut

2012-05-30 | 北極圏旅行2012初夏
寝不足気味だが、今日は長距離ハイクにチャレンジの日だ。宿をチェックアウトし、空港へ向けて歩き出す。
Hotel Arcticの道路はさんだ前がOqaatsutコース出発地点だ。



今度はオレンジ色の目印のようだ。トレイルを進んで行くと、空港手前で、一度道路に出るが、道路を進むと、ちょうど空港管制塔の向かいから、トレイルが再開する。しばらく滑走路横のフェンスの傍を辿る。ホステルのスタッフが言っていたように、かなり水浸しで、長靴でないと厳しい。しかし、雪は残っていない。想像よりは容易に歩ける。
滑走路の先、フェンスが途切れ、広大なツンドラの大地を独り進んでいく…
すると、なにやら遠くでざわざわ声がするぞ…
向こうに、小学生の団体だろうか、どうやら私と進む方向は、同じようだ。
どこに行くのか聞いたが、まだ英語は習ってないようだ…
彼らは、溝になって水溜りになってしまってるコースの上でなく、苔むしたコース外を勝手気ままに歩いてる…おいっ、脆弱なツンドラの自然を踏みにじっていいのか?!お前達の母なる大地じゃないか…
まあ、彼らは、ずっと昔から環境保護とか、そんな概念なしに、自然と調和して暮らしていたんですね…ツンドラの土地を踏まずして、狩や漁や、生活などできようか…

引率の先生に、いまどの辺なのか、ホステルのスタッフHenrikにコピーしてもらった地図を出して聞いてみた。
すると、先生は、Uujuk Killeqというところで、私達はあの家に2泊するの、と言う。見ると、遠くに家が見える。小学生の団体は全員で20人くらいか…20人も、あの小さな家に泊まれるのか…?
どうやらOqaatsutまでは行かないことが判明した。それもそうだな、Oqaatsutだと、Ilulissatから、20kmある。この団体、ほんの遠足って雰囲気だしな…
しかし、ということは、今いる地点はOqaatsutのコース上なのか?さっきからオレンジのマークがなく、そのうち出てくるだろうと思っていたが…
周りを見渡しても、オレンジのマークは見当たらない。ちょっと引き返して、探すが…ちゃんとよく踏まれたコース上を進んでいたので、てっきりOqaatsutへの道だと思っていた…
地図に目を凝らす。ここがUujuk Killeqだとすると、さっきの谷のところでコースが川に沿って上流へと向かっているな…
谷まで引き返す。結構滑りそうになりそうなところで、そこには、オレンジのマークがあったのは覚えている。
谷を降りた側にはオレンジのマークがあるが、対岸には見当たらない。上流の方へ目を凝らすと、オレンジのマークを発見。谷間の川を上流へと行く。



湖に出くわし、湖岸のマークを頼りに、雪で覆われた湖岸を歩く。湖から、上へと続く道があり、マークがあるのも見える。
やれやれ、乗り切った。見つからなかったら、どうしようかと思った。引き返すか、危険を承知で、コピーの地図頼りに続行するか、それとも、先生にお願いして、小学生の団体と一緒に合宿するか…
登ると、遠く海岸近くに、小学生の団体が泊まる家が見える。

先を独り歩いて行くと、Henrikが言っていた、川が見えてきた。そんな、幅はないが、結構流れ急だな…
ここに、橋が掛かっているはずだが、もう流されてるかもしれない…そうHenrikは言っていた。そうなると、なんとか渡れそうなところ見つけるか、引き返すしかない…
近づくと、木の板が岩に引っかかって、傾いて流されそうになっているのが見える…あれが橋?
確かに、ちゃんと川の上に固定されていれば、
あんな板でもその上を歩いて川を渡ることができる。しかし今は急な流れの下に、浸かっている…
とにかく、崖を降り、詳しく観察する。今にも流されそうに見えたが、急な流れの下、しっかり持ちこたえているようだ。人が載っても平気そうだ。流れの下といっても、長靴だと濡れずに渡れそうだ。
意を決して、足を載せる。橋はびくともしない。橋と一緒に流されることはなさそうだ。
全長4mぐらいの橋を、慎重にかつ、素早く渡る。よし、うまくいった。最難関をクリアした…

橋を渡った後から、極めてコースが分かり易くなった。ちゃんとオレンジのマークは視界にちょうどいい間隔で配置されていて、トレイルも、去年の夏は、よく通られているのか、はっきりしている。
適当なところで、昼食をとることにする。木陰で一息つきたかったが、ツンドラの大地に木陰などあろうはずはない。岩陰の残雪に瓶ビールを突っ込んで、近くの乾いたところに座る。
しかし、本当に快晴でラッキーだ。風もほとんどない。日向だと暑いくらいだ。
まさか、雪のSisimiutより北のIlulissatで、夏のような日が続くとは…

昼食後、先を急ぐ。まだ半分にも達してない。いくら24時間明るいといっても、遅くなると不安だ。気温も下がるし、若干暗くもなる。天気が急に崩れるかもしれないし、なにより宿を探さないといけない。

右手に潟が見えてきた。湖面はまだほぼ氷結している。海へと通じる水路があって、トレイルはその上を通っている。地図上でもちゃんと陸地と陸地が離れて描かれているが、そこは問題ない、とHenrikは言っていた。
実際、水路は岩で埋め尽くされていて、その上を通ればよかった。
水路を渡りきると、一本の流木が立てかけてある。Oqaatsutまであと5分の2ぐらいか。



ずっと山の斜面を行く。山といっても標高200mぐらいだし、トレイルも、アップダウンはほとんどない。道もわかり易く、オレンジのマークも順調に視界の範囲に常にある。
斜面の下に、家が、ポツリポツリと見える。人影はないが、誰か住んでいるのか?海も凍っているし、ボートもない。夏用の家なのか?



しかし長いな。20kmだとちょうどよい距離だと思ったが、昨日の寝不足のせいか、だるくなってきた。
そんなことを考えていると、さあどうぞと言わんばかりに、次に見えるオレンジのマークの下辺りが、広い一枚の岩になっていて、大の字になって寝れるぐらいのスペースがある。
岩の上に、タオルやサンダルなどをひいて、仮眠をとる…

休憩後、てくてく歩き始める。前半戦に比べて、トレイルも分かり易く、アップダウンもないので楽だ。ひたすら歩を進めればOK…
トレイルが岩山の斜面になった。これじゃ、先に踏んだ跡が残らないので、オレンジのマークだけが頼りだ。まあ、もう海岸沿いに歩いて行けば、たどり着くのは分かっている。
それにしても、この岩山、さらさらの溶岩が固まってできた山なのか、山の頂上から麓まで、板のように平らな岩でできている。一度転んだら、下まで転がって行きそうだ。



海岸には、大量の氷山が静かに浮いている。なぜか分からないが、今年はIlulissatからOqaatsutまで、大量の氷山が群がっている、とHenrikが言っていたが、まさにその通りの状況だ。

遠くに、集落が見える。どうやら、あれがOqaatsutのようだ。ようやくたどり着いた…氷山がぎっしり浮いている海と、可愛らしいカラフルな家々がポツリポツリあるさまが、なんとも絵になる。港で人影も見える。ハイキングを開始して、初めて土地の人を見た。ああ、これでようやく足を休めることができる。



墓地を通って村に入る。ここで、もうオレンジのマークは終わってるようだ。
岩の丘の上にベンチが据えられてある。ひとまず休憩をとるか・・・
ベンチの背に簡単な地図が貼り付けられてあって、大体の町の概要が把握できた。

Henrikの言っていたH8という宿兼レストランを探す。右手の港の方を見渡すと、屋根に大きく“H8”と書かれた海岸に面した家を発見。なんて分かりやすいんだ・・・



H8に近づく。なんか悪い予感が・・・
扉をノックする。やはり留守のようだ。窓から覗き込んでも、誰もいないし、気配もない。
周りの建物も覗いてみるが、同様だ。
狭い村だ、誰かに聞いたら何か知っているだろう。
港に行って、日に焼けた顔のイヌイットのおじさんに聞いてみた。
すると、あの青い家が、宿の持ち主だから、ノックしてみろ、とグリーンランド語で言ったように解釈できた。
ドアをノックする。返事がない。もう一度強く叩く…しびれを切らせて、ドアを開けてみた。すると、難なく開いて、同時にデンマーク人のおじさんがヌッと顔を出した。
あの…宿探してるんですけど・・・

H8のオーナーは、気のいいおじさんだった。今日は休みだったらしく、レストランも休み。しかし、突然の来客のため、宿と食事を準備してくれた。
宿は、ドミトリー1泊280DKKと、寝袋を持ってこなかったため、プラス50DKK。食事は150DKK。Muskoxと、赤キャベツの煮たような物、ジャガイモ、氷山の氷を溶かした水・・・



Muskoxは初めて食べたが、柔らかく、やはり野性の牛という感じの味でなかなかうまい・・・
今は、シーズンがスタートしたばかりで、昨日は昼、30人の団体が来た、と言っていた。明日は5人ぐらいの団体が来るらしい。夏のシーズンになると、宿もレストランもフル稼働なんだろう。泊まり客は私1人で貸切状態だ。
宿も1階がリビングルームになってて、2階というか屋根裏部屋が8人泊まれる大部屋だ。しかし水道という物はない・・・
つまり、シャワーも無くて、トイレも水洗ではない・・・
シャワーは村共同のシャワールームがあるらしいが、もう遅くて閉まっている。手を洗うにも、ポリタンクの水を利用する。
食後、がらんとした部屋で休んでいると、急に疲れが感じられた。暖房ももちろんないので、身体も冷えてくる。歯を磨き、顔だけ洗って、早々に寝袋に入って就寝する。




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