先の水神の提案に、真っ先に反応したのはエスト。「それって、パパにあの和音を弾けってこと?」「ああ。今度こそ完全に、疫水神を封じねば」「……そんな危ないこと!」「奥方、あんたがたは必ず守る」水神も言葉を添える。「だからフアン、きみも力を貸してくれ」「ぼくも?」「どうやら天地の力を合わせねば、封印できそうにないのでね」「もう、神様も情けないわね!」そのとき。明け方の鐘に似た和音が、決着をつけるように鳴り渡った。「パパ!」エストが叫ぶ。「心配ないよ、エスト」ニコラスが穏やかに言う。「水神様を信じてみよう」刹那のうちに、部屋の空気がたわみはじめた。先の水神、水神、フアンが声を合わせる。“水返しの歌”。非常時とわかっていても、それはうっとりするような歌声だった。だがこのたびは、疫水神の抵抗も強かった。
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