「人の身……ああ、ぼくですか」束の間虚を突かれた風情になったニコラスが、照れたようにギターを持ち直す。「そうとも」と、先の水神。「ここには、純然たる人の子はきみしかいないからね」「あら、あたしは?」間髪を入れずエストが問う。「きみは、わたしの孫息子の妻となった時点で、わが眷族の仲間入りだよ」「孫……そうか、フアンは師匠の孫になるわけだ」と水神。「万年にひとりといわれた水神様の孫なら」「フアンの唄が人を魅了するのも当然ね」父と頷き交わしたエストは、夫に向き直る。「フアン、あなたこのこと知ってたの?」フアンはかぶりを振った。「物心ついたときには、母さんと父さんしかいなかったからね」「さて──と。つもる話はあとにして」先の水神が声音を引き締める。「ニコラスとやら。もう一度ギターを弾いてくれないか」
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